ACモーターの回転速度を調整するには?
- 学くん
- 照代さん。ちょっと確認させてください。ACモーターは印加電圧を下げると速度も下がりますよね?
- 照代さん
- お問い合わせかしら?
- 学くん
- はい。変圧器(トランス)で速度の調整が出来るかお問い合わせいただきました。手間をかけたくないので、使用中のモーターを装置から外さずにできる、手軽な方法を探しているそうです。
- 照代さん
- 『下がりますよね?』ってことは、学くんは下がると思っているということ?
- 学くん
- そうです!小学生の頃にモーターの実験をした記憶があります。乾電池1つの時より2つ直列につないだ時のほうが早く回りました。これって印加電圧によってモーターの速度が変わったってことかと。
- 照代さん
- すごいわね学くん。勉強熱心な子供だったのね。でもその実験はDCモーターだったと思うわ。ACモーターは同じようにはならないの。
- 学くん
- えっ?そうなんですか?
- 照代さん
- 下の特性図を見て。印加電圧を変化させた場合の回転速度-トルク特性に負荷トルクTLの線を加えたデータよ。ACモーターは負荷と釣り合ったポイントで回るから、TLと各カーブの交点が回転速度になるわ。するとどう?
- 回転速度-トルク特性
- 学くん
- 100Vから90Vに下げたことによってトルクが小さくなっていますね。ただ、回転速度はあまり下がっていないですね。80r/min程度でしょうか。
- 照代さん
- そうなの。ACモーターは電圧を変えることによってトルクが変化するから結果として速度も変わるけど、それによって調整できる速度の幅は狭いの。かと言って電圧を下げすぎるとトルクが小さくなって回転しなくなるし。
- 学くん
- ずっとDCモーターと同じように考えていました。ACモーターは全然違うんですね。するとモーター単独での調整は出来ないってことなので、制御回路もあわせた紹介になりますね。
- 照代さん
- 制御回路と言っても、単相モーターにインバータが使えないことは知ってるわよね?
- 学くん
- 大丈夫です。インバータは三相モーター用です。では変圧器での速度調整はおすすめしていないことを回答しつつ、オリエンタルモーターのスピードコントロールモーターをご紹介します。
- 照代さん
- 学くん。スピードコントロールモーターには2種類あるけど、それぞれの説明は大丈夫?
- 学くん
- えーと、少し不安なので確認してからご連絡します。
- 照代さん
- 学くん、この比較表を参考にして。以前作成した、それぞれの特徴を大まかにまとめたものよ。
- 学くん
- 何ですかこれ。わかりやすいじゃないですか!僕にもください!
- 照代さん
- 新入社員教育の時に学くんにもあげたはずだけど。なくしたの?
- 学くん
- いえ…あります。多分…
- 照代さん
- …。じゃあ気を取り直して。特性とか機能の違いはたくさんあるけど、使い分けの代表的なポイントを簡単に説明するわね。まずはACスピードコントロールモーター。これは手軽でリーズナブルなところが魅力よ。特にUS2シリーズは配線がシンプルなのでアッと言う間に動かせちゃうわ。この動画を見て。
- 学くん
- ほんとに簡単ですよね。僕は単相100V用にプラグ付の電源ケーブルが付属している点もおすすめです。コンセントに挿してすぐ動かしたいお客様には好評です。
- 照代さん
- ただ特性面では注意が必要よ、学くん。回転速度-トルク特性からもわかるように、ACスピードコントロールモーターの低速域は連続運転領域が狭いの。短時間の運転であれば問題ないけど、連続的に使用する場合はモーターの発熱に注意する必要があるわ。ACスピードコントロールモーターは手軽に使える良さがあるけど、この点はご紹介する時にお伝えすべきポイントね。
- 学くん
- 忘れずにお伝えします。
- 照代さん
- じゃあ次、ブラシレスモーター。ブラシレスモーターは高速から低速まで調整出来て、更に速度変動率が小さい点ね。対負荷速度変動率は覚えてる?
- 学くん
- 以前「ブラシレスモーターは負荷がかかっても速度は落ちないの?」で教えていただいたので覚えています。簡単に言うと、この値が小さいほど設定値に対して忠実に回転するということですよね。
- 照代さん
- そうね。負荷が変化した場合でも回転速度を一定に保ちたい場合はおすすめね。
- 学くん
- 例えばどんな使い方だと対負荷速度変動率が求められるんですか?
- 照代さん
- 色々あるけど、2列式コンベヤや研磨機、それに撹拌機なんかが当てはまるかしら。
-
2列式コンベヤ 研磨・バリ取り機 攪拌機 - 学くん
- 2列式コンベヤは2台のモーターが同じ速度で回転しないといけないからで、研磨機は砥石とワークの摩擦によって負荷が増えても同じ速度で回転させたいからですよね。でも攪拌機はどうして対負荷速度変動率が求められるんですか?
- 照代さん
- 攪拌機は主に食品や薬品などをかき混ぜる目的で使われるけど、元々の粘度がさまざまなだけでなく、かき混ぜていくと変化するものもあるの。粘度が変化しても一定の速度でかき混ぜたい撹拌機の場合は、対負荷速度変動率が小さいほうが良いのよ。
- 学くん
- なるほど。確かにブラシレスモーターが最適ですね。
- 照代さん
- それともうひとつ。さっきも話に上がったけど、インバータという手もあるわね。三相モーターなら後付けするだけだから、手軽に速度制御できるわ。それとインバータ1台で複数のモーターを制御(複数軸制御)できる点も、ACスピードコントロールモーターやブラシレスモーターにはない特徴ね。
- 複数軸制御の例(ベルトコンベヤ)
- 学くん
- 複数のモーターを同様に動かす場合は簡単で良いですね。でも、どうしてそんなことが出来るんですか?
- 照代さん
- 他の2つと違ってモーターの状態を監視していない(オープンループ)からできるのよ。ただ複数軸制御はインバータの機能によるので選ぶ際に確認が必要ね。それと、インバータと三相モーターは組み合わせによって特性が異なることにも注意が必要よ。KⅡSシリーズならWEBサイトに組み合わせ特性データを公開しているからこちらもご案内してね。お客様の設計時の負担を減らせると思うわ。あっ学くん。そろそろお客様に回答しなくちゃ。
- 学くん
- はい。ではお客様に現在使用しているモーターや使い方を確認したうえで、「ACスピードコントロールモーター」「ブラシレスモーター」「インバータ+三相モーター」をご紹介します。
- 照代さん
- それぞれの構造や動作原理の違いについてはWEBサイトのeラーニング「スピードコントロールモーターの使い分け」で詳しく説明しているから、あわせてご紹介してね。
- 学くん
- はい。事前に僕も見てみます。
- 照代さん
- 私の比較表も探して復習してね。
- 学くん
- …。はい。
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