αSTEP AZシリーズ開発秘話「世の中で最も簡単な位置決めモーターを開発する」発売10年の歩みと展望

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ステッピングモーターにABZO(アブゾ)センサを搭載し、バッテリレスのアブソリュートシステムの構築を実現したαSTEP AZシリーズ。多くのお客様からご支持をいただき、10周年を迎えることができました。そして2023年1月にはサーボタイプのAZXシリーズが登場。今回、発売10年の節目と新製品AZXシリーズ発売を機に、進化を続けるAZファミリーについて開発担当者に話を聞きました。

chapter 1. αSTEP AZシリーズ誕生前夜

エンコーダを小型化する技術からヒントを得て、画期的な製品が誕生。

制御機器システム事業部 部長 菅原力
制御機器システム事業部 部長 菅原力

αSTEP AZシリーズの開発に至った背景やきっかけについてお聞かせください。

菅原:2010年頃、機械式アブソリュートセンサをより小さくできる要素技術に目途が立ち、これをαSTEPに組み合わせれば面白いものができるのではないか、というアイデアが出たのが最初のきっかけです。他社でもバッテリレスのアブソリュートシステムはあるのですが、サーボモーターに付けるのが一般的。ステッピングモーターに付ければ、ゲインなどの調整やアブソリュートシステムで必須のバッテリのメンテナンスが必要ないものができそうだと。こうして始まったAZシリーズの開発ですが、2011年の東日本大震災により、すべてストップしてしまいました。まずは供給対応の方を優先でやっていこうということ、それから当時は景気が落ち込み、残業ができない状況でしたからね。ただ、こっそりと開発は続けていました。

鈴木:本業の合間に少しずつ回路を作ったり、出張の帰りの電車の中で打ち合わせをすることもありましたね。試作品もかなり作って、他の製品より多かったと思います。

製品開発に際して、どのようなリサーチをされましたか?

菅原:前世代のαSTEP ARシリーズの紹介を兼ねてお客様先に同行して、意見交換や課題の把握など、ヒアリングをじっくり行いました。アブソリュートはバッテリが切れた時に、原点復帰をしないといけない。そのために普段は使用しない外部センサを復旧時のために取り付ける必要があり、アブソリュートのメリットが活かせないという課題が見えてきました。また、原点の設定に苦労されていることも分かりました。AZシリーズなら、こうした課題を解決できますから、開発中からこれはイケるんじゃないか、という手応えはありましたね。

AZシリーズの開発において、技術的に難しかったところや苦労された点はありますか?

菅原:やはりセンサ部分です。機械式のアブソリュートセンサということで、内部で歯車を組み合わせるのですが、その精度、信頼性を確実なものにしなければいけない。これまでやったことのない試験を繰り返すなど、苦労はありました。ただ、我々は減速機の内製も行っているので、そちらで培ってきた歯車の技術や経験を活かせた部分はあるのかなと思います。

バッテリレス アブソリュートセンサ搭載 AZシリーズ

chapter 2. 想定を大きく超える評価を獲得

お客様の原点復帰の課題を解決し、ラインアップの充実とともに浸透。

制御機器システム事業部 制御技術部 主任 鈴木史人
制御機器システム事業部 制御技術部 主任 鈴木史人

約2年の開発期間を経て、2013年にαSTEP AZシリーズが発売されました。発売から10年で累計出荷台数35万台、αSTEP全体では発売からまもなく100万台到達と高い支持をいただいていますが、当時のお客様の反応を教えてください。

  • ※ 2021年末現在

菅原:半導体装置メーカーには、早い段階で紹介して開発の話をいただいていたので、そこは狙い通りに入っていけました。それ以外では自動車製造ラインなど、FA(ファクトリーオートメーション)のお客様の反応が良かったですね。埃が舞っていたり、油が飛ぶなど、外部環境が悪い場所だとセンサが誤動作することが多く、原点等のセンサを使わないアブソリュートシステムにしたい。しかし、サーボモーターだとバッテリが切れた時や交換が大変。センサを利用せず、機構端に押し当てて機械的に原点出しするお客様もいて、我々が想定していた以上に原点出しや外部センサには課題が多いことを知ることができました。このようなお客様に、AZシリーズは高い評価を得られたと思います。

鈴木:最初は取付角42mmタイプと60mmタイプの2機種のみでしたから、まずこの新しいアブソリュートシステムを市場に浸透させる活動をメインに実施しました。その後、ラインアップが充実して、お客様の出力帯をカバーできるようになると一気に普及していきましたね。

菅原:実は前世代のαSTEP ARシリーズは、ネットワーク対応の面で開発が追いつかず他社に後れを取ってしまったのです。その反省を活かしてAZシリーズでは、外部の協力会社と一緒にネットワーク対応をスピーディーに展開しました。その点もAZシリーズの普及に効果的だったと思います。

採用に関して印象に残っているエピソードはありますか?

菅原:ウエハ搬送ロボットに採用された件でしょうか。もともと他社サーボモーターを使っていたお客様で、すべて当社製品に変えてくれました。決め手は、搬送ロボットなのでセンサを置けませんから、アブソリュートシステムが必須であったこと。負荷慣性が大きく剛性が低い機構のため、サーボモーターは振動しやすく不向きな用途です。ステッピングモーターかつ、クローズドループ制御のアブソリュートシステムが適していたと言えます。当社と取引のないお客様だったので、最初は我々に対して懐疑的な面もあったと思いますが、今では非常に良い信頼関係を築けています。

その他にお客様に評価されている点はありますか?

菅原:あとは価格帯もあるでしょう。モーター構造上ステッピングモーターは安価ですし、AZシリーズの制御にはエンコーダに高い精度を必要としません。アブソリュートシステムなので原点等の外部センサや配線も不要です。トータルでのコストダウンが期待できます。

chapter 3. サーボタイプAZXシリーズ登場

サーボモーターで高出力領域をカバー。AZシリーズの課題を解決する新製品。

制御機器システム事業部 制御技術部 主任 鈴木史人

AZファミリーにサーボタイプのAZXシリーズが仲間入りします。この製品のコンセプトについてご紹介ください。

鈴木:ステッピングモーターが得意としているのは低速の領域なので、ステッピングモーターベースのAZシリーズはどうしても高速の領域ではトルクが落ちてしまう。ですから、大型の装置やロボットの根元部分の軸など、速度とパワーが必要なニーズにこれまで対応できていませんでした。そこを補うために誕生したのが、今回発売のサーボモーターAZXシリーズです。AZシリーズと同じインターフェース、同等の使い勝手で高出力帯をカバーでき、装置全体をAZファミリーで統一することが可能。使い勝手の面でお客様のストレスを大幅に軽減できます。

菅原:従来は、ステッピングモーターは当社の製品、サーボモーターは他社の製品で装置を構成するケースが少なくありませんでした。それだと使い勝手が違うので、お客様に負担をかけてしまう。そこを何とかしたいという思いで、開発した製品になります。

1軸だけでも他社製品を使うと大きなストレスになるのでしょうか?

鈴木:はい。メーカーが違えばソフトも違いますから、使い分けるのは大きなストレスになると思います。また使い勝手に加えて、微妙に制御性も異なりますし、ソフトの組み方やPLCも変わってしまうので、嫌がるお客様は多いですね。

オリエンタルモーターとしては、十数年ぶりのサーボモーターの新製品になります。

鈴木:高まっていたニーズに対して、既存技術の流用により、企画からおよそ1年間という短期間で商品化することができました。AZシリーズを10年やってきてノウハウが確立されていますから、試行錯誤しながらも良いものができたと思います。

菅原:当社の製品は小型のものが多いので、初めてお客様に見せた時は「デカいな」という反応が結構ありました。サーボモーターとしては一般的なサイズで、特別大きいわけではないんですけどね。小さくできるものはより小さく、パワーが必要なものはパワーを重視して、状況に応じた最適な製品を提供していきます。

chapter 4. AZファミリーの今後の展望

AZファミリーの充実を図り、さらなるお客様の手間削減に貢献。

制御機器システム事業部 部長 菅原力

AZシリーズは、モーターだけでなく、ギヤやスライダ、シリンダ等の機構を組み合わせた製品もカタログ掲載の標準品として展開しています。その意図を教えてください。

菅原:我々の商品でこだわっているのは「お客様の手間を省く」ということ。他社では、モーターは自社のものを使って、スライダやシリンダなどの機構商品は別メーカーのものを組み合わせているというのも一般的です。アクチュエータも同様ですが、お客様の方では調達や組み付け、モーターのパラメータ設定に評価、と手間がかかってしまいます。それを導入してすぐ使えるようにしたいのです。

鈴木:製品の組み合わせはデータシートでは読めない部分もあり、想定通りにいかないことは結構あります。設計や評価を何度もやり直すことは手間がかかります。最初から特性が保証されている商品は、こうした工数の削減にも有効です。

AZファミリーの今後の展望をお聞かせください。

菅原:AZシリーズは「世の中で最も簡単に位置決めができるモーター」として今後も進化させていきたい。基本性能の向上、小型化、省エネなどの普遍的なニーズに応えていきます。また、安全性、信頼性を向上することで、今後増えていくロボットなど人間の近くでも安心してお使いいただけるモーションシステムを提供していきます。今後も使い勝手の良いものを作って、お客様の手間を省くことにこだわり、AZファミリーを発展させていきたいと思います。

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