モーターの選定 選定事例 - 巻き取り機構

巻き取り装置にトルクモーターを使用する場合の選定例です。

選定事例-巻き取り機構
  • ※ 巻き取り機構に適した製品についてはこちらでご紹介しています。

(1)駆動機構部の仕様と運転条件

巻き取り用ローラー径 ФD

巻き始めの径
D1 = 15[mm] = 0.015[m]
巻き終わりの径
D2 = 30[mm] = 0.03[m]
張力用ローラー径
D3 = 20[mm] = 0.02[m]
巻き取り速度
V = 47[m/min](一定)
張力
F = 4[N](一定)
電源
単相100V、50Hz
運転時間
連続

(2)巻き取り用モーターの選定

巻き取り用のモーターには、一般的に次のような条件が求められます。

  • 巻き取り速度は一定
  • 一定の張力を加え、材料のたるみを防ぐ。

この条件を満たすためには、次のポイントでモーターを選ぶ必要があります。

  • 巻き始めと巻き終わりで巻径が変化するため、巻き取り速度を一定にするには、モーター回転速度を巻径に応じて可変する必要がある。
  • 張力を一定とした場合、巻き始めと巻き終わりではモーターへの必要トルクが変わるため、巻径に応じてトルクを可変する必要がある。

トルクモーターは、これらの条件に適した特性を持っています。

①必要回転速度の算出

巻き始めに必要な回転速度N1を求めます。

\(\begin{align}N_1 &= \frac{V}{\pi \cdot D_1} = \frac{47}{\pi \times 0.015} = 997.9 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right] \fallingdotseq 1000 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right] \end{align}\)

巻き終わりに必要な回転速度N2を求めます。

\(\begin{align}N_2 &= \frac{V}{\pi \cdot D_2} = \frac{47}{\pi \times 0.03} = 498.9 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right] \fallingdotseq 500 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right] \end{align}\)

②必要トルクの算出

巻き始めに必要なトルクT1を求めます。

\(\begin{align}T_1 &= \frac{F \cdot D_1}{2} = \frac{4 \times 0.015}{2} = 0.03 \left[ \mathrm{N} \cdot \mathrm{m} \right] \end{align}\)

巻き終わりに必要なトルクT2を求めます。

\(\begin{align}T_2 &= \frac{F \cdot D_2}{2} = \frac{4 \times 0.03}{2} = 0.06 \left[ \mathrm{N} \cdot \mathrm{m} \right] \end{align}\)

この巻き取り用モーターに必要な条件は、次のようになります。

巻き始め
回転速度N1=1000[r/min]、トルクT1=0.03[N・m]
巻き終わり
回転速度N2=500[r/min]、トルクT2=0.06[N・m]

③モーターの選定

回転速度―トルク特性の確認
上の必要条件を満足できるモーターを、トルクモーターTMシリーズから選びます。4TK10A-AW2J+TMP-1の回転速度―トルク特性図中に、必要条件をプロットすると、トルク設定電圧をDC1.9Vに設定した場合の特性と、ほぼ同等になることがわかります。

回転速度―トルク特性

4TK10A-AW2J+TMP-1(100V 50Hz)
回転速度―トルク特性

運転時間の確認
4TK10A-AW2J+TMP-1の場合、トルク設定電圧をDC5.0Vに設定したときは5分定格、DC1.9Vに設定したときは連続定格です。今回の条件では、トルク設定電圧はDC1.9V以下になるため、連続で運転できることがわかります。

ご注意

  • 巻き取り用として連続運転でご使用になる場合は、トルクモーターの使用定格が連続運転となるような条件でお使いください。

(3)張力用モーターの選定

巻き取りをおこなう場合、張力がないと材料のたるみなどが発生するため、きれいに巻き取りがおこなえません。トルクモーターは逆相ブレーキ特性を持っているため、張力用のモーターとして使用することもできます。
上記の巻き取り装置では、張力用モーターを次のように選定します。

①必要回転速度N3の算出

\(\begin{align}N_3 = \frac{V}{\pi \cdot D_3} = \frac{47}{\pi \times 0.02} = 748.4 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right] \fallingdotseq 750 \left[ \mathrm{r}/ \mathrm{min} \right]\end{align}\)

②必要トルクT3の算出

\(\begin{align}T_3 &= \frac{F \cdot D_3}{2} = \frac{4 \times 0.02}{2} = 0.04 \left[ \mathrm{N} \cdot \mathrm{m} \right]\end{align}\)

③モーターの選定

上の必要条件を満足できるモーターを、トルクモーターTMシリーズから選びます。4TK10A-AW2J+TMP-1の逆相ブレーキによる回転速度―ブレーキトルク特性図中に、必要条件をプロットすると、トルク設定電圧をDC1.0Vに設定した場合の特性と、ほぼ同等になることがわかります。

逆相ブレーキによる回転速度―ブレーキトルク特性

4TK10A-AW2J+TMP-1(100V 50Hz)
逆相ブレーキによる回転速度―ブレーキトルク特性

ご注意

  • ブレーキ用として連続運転でご使用になる場合は、使用する回転速度、トルク設定電圧により温度上昇が変わります。モーターケース温度は90℃以下でご使用ください。

以上の確認から、巻き取り用モーター、張力用モーターともに4TK10A-AW2J+TMP-1が使用可能です。

  • ※ 各製品の回転速度―ブレーキトルク特性については、お近くの支店、営業所またはお客様ご相談センターにお問い合わせください。

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