2-2. 減速機構 ― ギヤヘッドについて

ギヤヘッドとは、ACモーターの回転速度を遅くし、発生トルクを大きくする機構のことです。
歯切りシャフトタイプのモーターの先に取り付けて使用します。
こちらのページでは、ギヤヘッドの役割、仕様の見方、種類について説明します。

2-2-1. ギヤヘッドの役割

ギヤヘッドには、モーターの「回転速度を遅くする」「発生トルクを大きくする」「オーバーラン量を小さくする」という役割があります。

回転速度を遅くする

ACモーターの回転速度は、電源周波数、モーター極数、負荷の大きさによって決まります。
ギヤヘッドを組み合わせると、ギヤヘッドの減速比分、モーターの回転速度を遅くすることができます。

$$\bbox[5pt, border: 1px solid black]{ {\text { ギヤヘッド出力軸の回転速度 }[\mathrm{r} / \mathrm{min}]} = \frac{\text { モーター軸の回転速度 }[\mathrm{r} / \mathrm{min}]\strut}{\text { 減速比 }\strut} }$$

例えば、モーター軸の回転速度が1300r/minのとき、減速比1/50のギヤヘッドを使用すると、ギヤヘッドの出力軸の回転速度は26r/minになります。

発生トルクを大きくする

ACモーターのトルクは、製品ごとに仕様値があります。
ギヤヘッドを組み合わせると、ギヤヘッドの減速比分、発生トルクを大きくすることができます。

$$\bbox[8pt, border: 1px solid black]{ \begin{gathered} \text { ギヤヘッド出力軸の}\\\text { トルク }\end{gathered} =\text { モーター軸のトルク } \times \text { 減速比 } \times \text { ギヤヘッドの伝達効率 } }$$

トルクを減速比倍することが理想ですが、ギヤ内部の歯車がかみ合わさるときの摩擦によって、力をロスします。
そのため算出時には、ギヤヘッドの伝達効率を考慮します。
平行軸ギヤヘッドの場合、高減速比は複数の歯車で構成されているため、ロスが多くなります。

表:品名別の減速比

例えば、モーター軸のトルクが0.2N・mのとき、減速比1/50、伝達効率86%のギヤヘッドを使用すると、ギヤヘッドの出力軸のトルクは8.6N・mになります。

オーバーラン量を小さくする

ギヤヘッドを組み合わせると、ギヤヘッドの減速比分、オーバーラン量を小さくすることができます。

$$\bbox[5pt, border: 1px solid black]{\text { ギヤヘッド出力軸のオーバーラン } = \frac{\text { モーター軸のオーバーラン }\strut}{\text { ギヤヘッドの減速比 }\strut}}$$

インダクションモーター、レバーシブルモーター、電磁ブレーキ付モーターに、減速比1/50のギヤヘッドを使用すると、ギヤヘッドの出力軸のオーバーラン量の目安(参考値)は、下表のようになります。

モーター種類 モーター軸のオーバーラン量 ギヤヘッドの減速比 ギヤヘッド出力軸のオーバーラン量
インダクションモーター 30 ~ 40回転 1/50 0.6 ~ 0.8回転
レバーシブルモーター 5 ~ 6回転 0.1 ~ 0.12回転
電磁ブレーキ付モーター 2 ~ 3回転 0.04 ~ 0.06回転

2-2-2. ギヤヘッドの仕様の見方

ギヤヘッドを選定するときに参照する仕様表の見方について説明します。

ギヤヘッド取付時の許容トルク

モーターとギヤヘッドの組み合わせによって、許容トルクの大きさが異なります。
機構条件から必要トルクを算出し、許容値以内であることを確認します。

表:回転速度と減速比
① 品名
モーターとギヤヘッドのコンビタイプ品名です。
製品によっては、単体品名で記載されている場合もあります。
② 回転速度
モーターの同期回転速度を基準として求めた、ギヤヘッド出力軸の回転速度です。
実際の回転速度は負荷の大きさに応じて2~20%少ない値を示します。
③ 減速比
ギヤヘッドの減速比です。
④ 許容トルク
モーターの定格トルクに、ギヤヘッドの減速比と、ギヤヘッドの伝達効率をかけた値です。
ある減速比以上になると、ギヤヘッドが許容できるトルクを超えてしまうため、制限されます。
⑤ 最大許容トルク
ギヤヘッドにかけられる負荷トルクの上限値です。
これを超える負荷を与えると、ギヤヘッドが破損する恐れがあります。

ギヤヘッドの許容ラジアル荷重・アキシアル荷重

ラジアル荷重とは、出力軸に対して直角方向に加わる荷重です。
アキシアル荷重とは、出力軸に対して軸方向に加わる荷重です。

ギヤヘッドごとに、許容できるラジアル荷重・アキシアル荷重の大きさが異なります。
機構条件から荷重を算出し、許容値以内であることを確認します。

図:ギヤヘッドの許容ラジアル荷重・アキシアル荷重
表:ギヤヘッドの許容ラジアル荷重・アキシアル荷重

荷重の計算方法については、おしえて!照代さん「ラジアル・アキシアル荷重って何ですか?」をご覧ください。
ギヤヘッド出力軸からの伝達機構にチェーン、歯車、ベルト等を使用する場合は、必ず出力軸にラジアル荷重が加わります。
ギヤヘッドに過大なラジアル荷重が加わる場合は、両軸支持となる伝達構造を設けてください。詳しくはこちら

ギヤヘッドの許容慣性モーメントJ

慣性モーメントとは、物体の動き出しにくさや止まりにくさを表す値です。
詳しくは、おしえて!照代さん「モーターを選ぶ時、慣性モーメントはなぜ大切なの?」をご覧ください。

モーターの種類ごとに、許容できる慣性の大きさが異なります。
機構条件から慣性モーメントJを算出し、許容値以内であることを確認します。

表:ギヤヘッドの許容慣性モーメントJ

慣性モーメントJの計算方法については、技術資料をご覧ください。

2-2-3. ギヤヘッドの種類

当社のギヤヘッドには3つの種類があります。負荷や装置に合わせて使い分けることで、減速以外のメリットが得られます。

種類 特徴 アプリケーション例
平行軸ギヤヘッド
平行軸ギヤヘッド
モーター軸と平行に、出力軸が配置されているギヤヘッドです。モーターのトルクを効率よく出力軸に伝えることができます。
アプリケーション例
直交軸ギヤヘッド(中空軸・中実軸)
直交軸ギヤヘッド
(中空軸・中実軸)
モーター軸に対して90°直交方向に出力軸が配置されているギヤヘッドです。中空軸タイプと中実軸タイプがあります。

直交軸ギヤヘッドを使うと、コンベヤなどの被動軸に対してモーターを直角に取り付けるため、装置の省スペース化が図れます。
アプリケーション例
リニアヘッド
ラック・ピニオン機構を採用し、モーターの回転動作を、直線動作に変換するギヤヘッドです。水平駆動タイプと垂直駆動タイプがあります。

直線動作の駆動源として使用できます。
アプリケーション例
  • ※ 製品により、組み合わせられるギヤヘッドが異なります。

まとめ

ギヤヘッドは、モーターの「回転速度を遅くする」「発生トルクを大きくする」「オーバーラン量を少なくする」ことができる

ギヤヘッドの選定時は、「許容トルク」「許容ラジアル荷重・許容アキシアル荷重」「許容慣性モーメントJ」を確認する

直交軸ギヤヘッドは装置の省スペース化に貢献し、リニアヘッドは直線動作の駆動源として使用できる

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