3-2. 運転パターンの確認

駆動機構の送り量・位置決め時間の条件や、3-1. 必要分解能の確認で求めた必要分解能をもとに、運転パターンを確認します。
運転パターンは、運転パルス数・運転パルス速度(モーター回転速度)・加速(減速)時間・起動パルス速度で構成されます。
運転パターンの各要素は、以降の選定計算においてとても重要になります。

運転パターンの駆動イメージ

運転パターンの駆動イメージ

運転パルス数(A)の求め方

機構条件の送り量を、モーター軸上に換算し、必要な運転パルス数を求めます。
ステップ角は、実際に使用するモーターのステップ角の値を使用します。

直動機構の場合

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{ \begin{align}運転パルス数\ \text{A}\ = \frac{ワークの移動量\ [\mathrm{mm}]}{\text{モーター1回転あたりの移動量}\ [\mathrm{mm}]} \times\frac{360\ [^{\circ}\ ]}{\text{ステップ角}\ [{^\circ} / \text{step}]}\end{align} }\)

回転機構の場合

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{ \begin{align}運転パルス数\ \text{A} = \frac{\text { 位置決め角度} [^{\circ}\ ]\strut}{\text { 分解能 }\ [{^\circ} / \text{step}]\strut}\end{align} }\)

運転パルス速度(f2)の求め方

運転パルス数と位置決め時間をもとに、起動パルス速度や加速(減速)時間を考慮しつつ、運転パルス速度を求めます。

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{ \begin{align}\text { 運転パルス速度 }\text{f}_2 = \frac{\text { 運転パルス数 }[\text{パルス}]-\text{起動パルス速度}[\text{Hz}]\times \text{加速(減速)時間}[\text{s}]} {\text{位置決め時間}[\text{s}] - \text { 加速(減速)時間 }[\text{s}]}\quad\end{align} }\)
  • ※ 自起動運転パターンの場合は、加速(減速)時間を0として計算します。
    ただし、位置決め時間に余裕がある場合は、なるべく加速(減速)時間を設定してください。
    ここで設定した値が、3-6. 加速トルクの算出5-1. 加減速レートの確認に影響します。
  • ※ 起動パルス速度を設ける場合も、起動パルス速度は0として計算することをおすすめします。
    モーターの速度条件が最も厳しくなるため、より安心してモーターを選定することができます。

モーター回転速度(N)の求め方

運転パルス速度を、モーターのステップ角をもとにして、モーター回転速度に変換します。
モーターの回転速度は、4-1. モーターの仮選定に必要な要素のーつです。

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{ \begin{align}\text{モーター回転速度}\ \text{N}= \frac{\text{ステップ角}\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times \text{パルス速度}[\text{Hz}] \times 60\end{align} }\)

運転パターンの計算例

手順

① 運転パルス数を求める

② 加速(減速)時間を設定する

③ 運転パルス速度を求める

④ 運転パルス速度をモーター回転速度に変換する

機構条件のー覧を表示する

運転パルス数(A)を求める

機構条件と、3-1. 必要分解能の確認で求めた分解能(ステップ角) : 0.72 [°/step]をもとに、運転パルス数(A)を求めます。

\(\begin{aligned}\text{運転パルス数}\ \text{A} & = \frac{送り量(\text{l})\ [\mathrm{mm}]}{\text{ボールねじのリード(P}{_B})\ [\mathrm{mm}]} \times\frac{360 [^{\circ}\ ]}{\text{ステップ角}\ [{^\circ} / \text{step}]}\\[ 6pt ] & = \frac{300\ [\text{mm}]}{20\ [\text{mm}]}\times \frac{360 [^{\circ}\ ]}{0.72\ [{^\circ} / \text{step}]}\\[ 6pt ] & = 7500\ [\text{パルス} ] \end{aligned}\)

機構条件

  • l(送り量) : 300 [mm]
  • PB(ボールねじのリード) : 20 [mm]

加速(減速)時間(t1)を設定する

加減速運転パターンを使います。目安として、位置決め時間の25%を加速(減速)時間にあてます。

\(\text{加速(減速)時間}\ \text{t}{_1}\ =\ 1\ [\text{s}] \times 0.25 = 0.25\ [\text{s}] \)

機構条件

  • t0(位置決め時間) : 1 [s]

運転パルス速度(f2)を求める

モーターの速度条件がもっとも厳しくなるよう、起動パルス速度(f1)を0[Hz]として、運転パルス速度(f2)を求めます。

\(\begin{aligned}\text { 運転パルス速度 }\text{f}_2 & = \frac{\text { 運転パルス数(A) }[\text{パルス}]-\text{起動パルス速度}(\text{f}{_1})\ [\text{Hz}]\times \text{加速(減速)時間}(\text{t}{_1})\ [\text{s}]}{\text{位置決め時間}(\text{t}{_0})[\text{s}] - \text { 加速(減速)時間 }(\text{t}{_1})[\text{s}]}\\[ 6pt ] & = \frac{7500\ [\text{パルス}]-0\ [\text{Hz}]\times 0.25\ [\text{s}]}{1\ [\text{s}] - \text 0.25\ [\text{s}]}\\[ 6pt ]& = 10000\ [\text{Hz}]\end{aligned}\)

機構条件

  • t0(位置決め時間) : 1 [s]

運転パルス速度(f2)をモーター回転速度(N)に変換する

3-1. 必要分解能の確認で求めた分解能(ステップ角) : 0.72 [°/step]をもとに、[Hz]⇔[r/min]の速度変換をおこないます。

\(\begin{aligned}\text{モーター回転速度}\ \text{N} & = \frac{\text{ステップ角}\theta s\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times \text{運転パルス速度(f}{_2})\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = \frac{0.72\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times 10000\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = 1200\ [\mathrm{r} / \mathrm{min}]\end{aligned}\)

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運転パルス数(A)を求める

機構条件と、3-1. 必要分解能の確認で求めた分解能(ステップ角) : 0.36 [°/step]をもとに、運転パルス数(A)を求めます。

\(\begin{aligned}\text{運転パルス数}\ \text{A} & = \frac{送り量(\text{l})\ [\mathrm{mm}]}{\text{モーター1回転あたりの移動量}\ [\mathrm{mm}]} \times\frac{360\ [^{\circ}\ ]}{\text{ステップ角}\ [{^\circ} / \text{step}]}\\[ 6pt ] & = \frac{200\ [\text{mm}]}{\pi \times 31.85\ [\text{mm}]}\times \frac{360\ [^{\circ}\ ]}{0.36\ [{^\circ} / \text{step}]}\\[ 6pt ] & = 2000\ [\text{パルス} ] \end{aligned}\)

機構条件

  • l(送り量) : 200 [mm]
  • D(プーリーの直径) : 31.85 [mm]

加速(減速)時間(t1)を設定する

今回の機構条件では、すでに加速(減速)時間(t1)が設定されているため、計算は不要です。

機構条件

  • t1(加速(減速)時間) : 0.1 [s]

運転パルス速度(f2)を求める

起動パルス速度(f1)を0[Hz]として、運転パルス速度(f2)を求めます。

\(\begin{aligned}\text { 運転パルス速度 }\text{f}{_2} & = \frac{\text { 運転パルス数(A) }[\text{パルス}]-\text{起動パルス速度}(\text{f}{_1})\ [\text{Hz}]\times \text{加速(減速)時間}(\text{t}{_1})\ [\text{s}]}{\text{位置決め時間}(\text{t}{_0})[\text{s}] - \text { 加速(減速)時間 }(\text{t}{_1})[\text{s}]}\\[ 6pt ] & = \frac{2000\ [\text{パルス}]-0\ [\text{Hz}]\times 0.1\ [\text{s}]}{0.4\ [\text{s}] - \text 0.1\ [\text{s}]}\\[ 6pt ]& = 6667\ [\text{Hz}]\end{aligned}\)

機構条件

  • t0(位置決め時間) : 0.4 [s]

運転パルス速度(f2)をモーター回転速度(N)に変換する

3-1. 必要分解能の確認で求めた分解能(ステップ角) : 0.36 [°/step]をもとに、[Hz]⇔[r/min]の速度変換をおこないます。

\(\begin{aligned}\text{モーター回転速度}\ \text{N} & = \frac{\text{ステップ角}\theta s\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times \text{運転パルス速度(f}{_2})\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = \frac{0.36\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times 6667\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = 400\ [\mathrm{r} / \mathrm{min}]\end{aligned}\)

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運転パルス数(A)を求める

機構条件をもとに、運転パルス数(A)を求めます。

\(\begin{align}運転パルス数\ \text{A} & = \frac{\text { 位置決め角度}\theta\ [^{\circ}\ ]\strut}{\text { 要求分解能 }\theta s\ [{^\circ} / \text{step}]\strut}\\[ 6pt ] & = \frac{10\ [^{\circ}\ ]}{0.1\ [{^\circ} / \text{step}]}\\[ 6pt ] & = 100\ [\text{パルス}] \end{align}\)

機構条件

  • θ(位置決め角度) : 10 [°]
  • θs(要求分解能) : 0.1 [°/step]

加速(減速)時間(t1)を設定する

今回の機構条件では、すでに加速(減速)時間(t1)が設定されているため、計算は不要です。

機構条件

  • t1(加速(減速)時間) : 0.1 [s]

運転パルス速度(f2)を求める

起動パルス速度(f1)を0[Hz]として、運転パルス速度(f2)を求めます。

\(\begin{aligned}\text { 運転パルス速度 }\text{f}{_2} & = \frac{\text { 運転パルス数(A) }[\text{パルス}]-\text{起動パルス速度}(\text{f}{_1})\ [\text{Hz}]\times \text{加速(減速)時間}(\text{t}{_1})\ [\text{s}]}{\text{位置決め時間}(\text{t}{_0})[\text{s}] - \text { 加速(減速)時間 }(\text{t}{_1})[\text{s}]}\\[ 6pt ] & = \frac{100\ [\text{パルス}]-0\ [\text{Hz}]\times 0.1\ [\text{s}]}{0.4\ [\text{s}] - \text 0.1\ [\text{s}]}\\[ 6pt ]& = 333\ [\text{Hz}]\end{aligned}\)

機構条件

  • t0(位置決め時間) : 0.4 [s]
  • t1(加速(減速)時間) : 0.1 [s]
  • f1(起動パルス速度) : 0 [Hz]

運転パルス速度(f2)をモーター回転速度(N)に変換する

機構条件をもとに、[Hz]⇔[r/min]の速度変換をおこないます。

\(\begin{aligned}\text{モーター回転速度}\ \text{N} & = \frac{\text{ステップ角}\theta s\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times \text{運転パルス速度(f}{_2})\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = \frac{0.1\ [{^\circ} / \text{step}]}{360\ [{ ^\circ }\ ]} \times 333\ [\text{Hz}] \times 60\\[ 6pt ] & = 5.55\ [\mathrm{r} / \mathrm{min}]\end{aligned}\)

機構条件

  • θs(要求分解能) : 0.1 [°/step]

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ここで求めた値や選択したシリーズをもとに、次のページでは、運転パターンを確認します。

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