3-1. 密閉筺体における放熱能力の算出

ファンモーターの必要風量は、筺体内部の発熱量と、筺体の放熱能力によって決まります。
筺体内部の発熱量を、筺体の放熱能力(総放熱量)が上回る場合、ファンモーターによる強制冷却は不要です。

そのため、選定を始める前に、筺体における総放熱量を、密閉筺体、開放筺体の順に算出します。
筺体内部の発熱量を、筺体における総放熱量が下回る場合、その不足分に対しての必要風量を求め、ファンモーターを選定します。

  • 密閉筺体
    【密閉筺体】
  • 開放筺体
    【開放筺体】

まずは、筺体における総放熱量が小さい、密閉筺体における総放熱量から求めます。
開放筺体については、3-2. 開放筺体における放熱能力の算出をご覧ください。

密閉筺体における総放熱量(Q)の求め方

$$\bbox[8pt, border: 1px solid #ccc]{\text { 総放熱量 }{Q} = \text { 筐体面積からの放熱量 }[\mathrm{W}]}$$

筺体面積からの放熱量(QW)が、そのまま密閉筺体における総放熱量(Q)となります。
筺体面積からの放熱量(QW)の計算式は、以下の通りです。

$$\bbox[8pt, border: 1px solid #ccc]{\text { 筐体面積からの放熱量 }{Q_w} = {K}\ \times\ {S}\ ({T_1}-{T_2})}$$

筺体面積からの放熱量(QW)の算出には、熱通過率(K)の計算が必要です。
熱通過率(K)の計算式は、以下の通りです。

$$\bbox[8pt, border: 1px solid #ccc]{\frac{1}{\text { 熱通過率 } K}=\frac{1}{\alpha_1}+\frac{\iota}{\lambda}+\frac{1}{\alpha_2}}$$
  • QW
    筺体面積からの放熱量 [W]
    S
    筺体の有効表面積 [m2]
    α1
    内側の熱伝達率 [W/m2・K]
    α2
    外側の熱伝達率 [W/m2・K]
  • K
    熱通過率 [W/m2・K]
    T1
    目標温度(装置内温度) [℃]
    T2
    周囲温度 [℃]
    λ
    隔壁の熱伝導率 [W/m・K]

熱通過率、熱伝達率、熱伝導率の詳細については、こちらをご覧ください。

密閉筺体における総放熱量(Q)の計算例

手順

① 熱通過率(K)を求める

② 筺体面積からの放熱量(QW)を求める

③ 密閉筺体における総放熱量(Q)を求める

熱通過率(K)を求める

熱伝達率、熱伝導率をもとに、熱通過率(K)を求めます。

内側の熱伝達率 α1 = 4.65 [W/m2・K] 隔壁の熱伝導率 λ = 197 [W/m・K] 外側の熱伝達率 α2 = 4.65 [W/m2・K]
\(\begin{aligned}\frac{1}{\text { 熱通過率 } K}& =\frac{1}{\alpha_1}+\frac{\iota}{\lambda}+\frac{1}{\alpha_2}\\[ 5pt ] & = \frac{1}{4.65\ [\mathrm{W}/\mathrm{m^2}\cdot\mathrm{K}]}\ +\ \frac{0.002\ [\mathrm{m}]}{197\ [\mathrm{W}/\mathrm{m}\cdot\mathrm{K}]}\ +\ \frac{1}{4.65\ [\mathrm{W}/\mathrm{m^2}\cdot\mathrm{K}]}\\[ 6pt ] {K} & = 2.32\ [\mathrm{W}/\mathrm{m^2}\cdot\mathrm{K}] \end{aligned}\)

筺体面積からの放熱量(QW)を求める

筺体の仕様と、熱通過率(K)の値をもとに、筺体面積からの放熱量(QW)を求めます。

\(\begin{align}\text{ 筐体面積からの放熱量 }{Q_W} & = {K}\ \times\ {S}\ ({T_1}-{T_2})\\[ 5pt ] & = 2.32\ [\mathrm{W}/\mathrm{m^2}\cdot\mathrm{K}]\times 2.76 \ [\mathrm{m^2}]\ \times\ \left( 45\ [^\circ\mathrm{C}]\ -\ 25\ [^\circ\mathrm{C}] \right)\\[ 5pt ] & = 128.06\ [\mathrm{W}]\end{align}\)

要求仕様

  • S (筺体の有効表面積) : 2.76 [㎡]
  • T1(目標温度) : 45 [℃]
  • T2(周囲温度) : 25 [℃]

密閉筺体における総放熱量(Q)を求める

筺体面積からの放熱量(QW)が、そのまま密閉筺体における総放熱量(Q)となります。

\(\begin{align}\text{ 総放熱量 }{Q} & = \text{ 筐体面積からの放熱量 }[\mathrm{W}]\\[ 5pt ] & = 128.06\ [\mathrm{W}]\end{align}\)
筺体内部の発熱量 QX = 450 [W]

筺体内部の発熱量を、密閉筺体における総放熱量が下回るため、密閉筺体は要求仕様を満たしません。

次のページでは、開放筺体における放熱能力を求めます。

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