5-2. イナーシャ比の確認

選定したモーターと装置におけるイナーシャ比が適正であるか、確認します。(イナーシャ比の詳細はこちらを参照してください)
イナーシャ比の確認には、3-4. 負荷慣性モーメントの算出で求めた全負荷慣性モーメントの値と、4-2. 必要トルクの確定で確認したモーターのローター慣性モーメントの値を使用します。

イナーシャ比の計算式

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{\begin{align} \text { イナーシャ比 } = \frac{\text{装置の全負荷慣性モーメント}\ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]} {\text{モーターのローター慣性モーメント}\ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]\ \times\ {\text { 減速比 }^2}} \end{align}}\)
  • ※ ギヤードタイプ使用におけるイナーシャ比の計算式です。ギヤードタイプ以外のモーターでは、減速比を1として計算します。

イナーシャ比の目安

対象機種 取付角寸法 [mm] イナーシャ比
αSTEP 28、42、60、85 30以下
5相ステッピングモーター(モーター/ドライバ)
2相ステッピングモーター(モーター/ドライバ)
20、28、35 5以下
42、50、56.4、60、85 10以下
  • ※ 表中の値を超えるときは、ギヤードタイプを使用する(ギヤードタイプの場合は減速比を大きくする)ことをおすすめします。

ご注意

イナーシャ比が上表の値を超える場合、モーターが駆動しない、セットリングタイム(最後のパルス入力から、ローターの振動が完全になくなり停止するまでの時間)が長くなる、など問題が発生する恐れがあります。

イナーシャ比の計算例

3-4. 負荷慣性モーメントの算出で求めた装置の全慣性モーメント(JL)と、4-2. 必要トルクの確定で確認したモーターのローター慣性モーメント(J0)をもとに、イナーシャ比を確認します。

装置の全負荷慣性モーメント [kg・m2] JL = 3.03 × 10-4 イナーシャ比の目安
(参考値)
10以下
ローター慣性モーメント
[kg・m2](参考値)
RKS564 J0 = 160 × 10-7
RKS566 J0 = 270 × 10-7
RKS569 J0 = 540 × 10-7
  • RKS564の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{3.03\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{160\ \times 10^{-7} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 18.9\end{align}\)
  • RKS566の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{3.03\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{270\ \times 10^{-7} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 11.2\end{align}\)
  • RKS569の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{3.03\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{540\ \times 10^{-7} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 5.61\end{align}\)

イナーシャ比の確認をした結果、最終的にRKS569を選定することができました。

上記のような標準(丸シャフト)タイプだけでなく、ギヤを組み付けたギヤードモーターをご用意しています。
ギヤードモーターを使用することで、様々なメリットがあります。詳しくはこちら

3-4. 負荷慣性モーメントの算出で求めた装置の全慣性モーメント(JL)と、4-2. 必要トルクの確定で確認したモーターのローター慣性モーメント(J0)をもとに、イナーシャ比を確認します。

装置の全負荷慣性モーメント [kg・m2] JL = 8.99 × 10-4 イナーシャ比の目安
(参考値)
10以下
ローター慣性モーメント
[kg・m2](参考値)
RKS566 J0 = 0.27 × 10-4
RKS569 J0 = 0.54 × 10-4
RKS596 J0 = 1.1 × 10-4
  • RKS566の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{8.99\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{0.27\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 33.3\end{align}\)
  • RKS569の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{8.99\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{0.54\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 16.6\end{align}\)
  • RKS596の場合

    \(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}}\\[ 5pt ] & = \frac{8.99\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{1.1\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}\\[ 5pt ] & = 8.17\end{align}\)

イナーシャ比の確認をした結果、最終的にRKS596を選定することができました。

補足 : 取付角寸法を60mm以下にしたいとき

αSTEPのステッピングモーターなら、取付角寸法を60mmにすることができます。
今回の条件ならば、αSTEP ARシリーズのAR66が選定可能です。

シリーズ 品名 ローター慣性モーメント
[kg・m2]
必要トルク
[N・m]
加減速レート
[ms/kHz]
イナーシャ比
RKⅡシリーズ RKS566 0.27 × 10-4 0.838 30 33.3 NG
RKS569 0.54 × 10-4 0.860 16.6 NG
RKS596 1.1 × 10-4 0.907 8.17
ARシリーズ AR66 0.380 × 10-4 0.847 23.7

αSTEPはイナーシャ比を30以下まで許容できるため、装置のコンパクト化に貢献できます。
仕様詳細は、RKⅡシリーズと同じく、個別カタログに掲載しています。

ARシリーズ カタログPDFダウンロード(ログイン不要)

上記のような標準(丸シャフト)タイプだけでなく、ギヤを組み付けたギヤードモーターをご用意しています。
ギヤードモーターを使用することで、様々なメリットがあります。詳しくはこちら

3-4. 負荷慣性モーメントの算出で求めた装置の全慣性モーメント(JL)と、4-2. 必要トルクの確定で確認したモーターのローター慣性モーメント(J0)をもとに、イナーシャ比を確認します。

装置の全負荷慣性モーメント [kg・m2] JL = 37.4 × 10-4 イナーシャ比の目安
(参考値)
10以下
ローター慣性モーメント [kg・m2] J0 = 0.27 × 10-4
ギヤードモーターのギヤ比 i = 7.2
\(\begin{align} \text { イナーシャ比 } & = \frac{{J_L}}{{J_0}\times{i^2}}\\[ 5pt ] & = \frac{37.4\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]}{0.27\ \times 10^{-4} \ [\mathrm{kg}\cdot\mathrm{m^2}]\ \times\ {7.2}^2}\\[ 5pt ] & = 2.67\end{align}\)

イナーシャ比の確認をした結果、最終的にRKS566(PSギヤードタイプ、減速比7.2)を選定することができました。

補足 : 取付角寸法を42mm以下にしたいとき

αSTEPのステッピングモーターなら、取付角寸法を42mmにすることができます。
今回の条件ならば、αSTEP ARシリーズのAR46(PNギヤードタイプ、減速比7.2)が選定可能です。

シリーズ 品名 ローター慣性モーメント
[kg・m2]
必要トルク
[N・m]
加減速レート
[ms/kHz]
減速比 イナーシャ比
RKⅡシリーズ
(PSギヤード)
RKS566 0.27 × 10-4 0.0597 300 7.2 2.67
ARシリーズ
(PNギヤード)
AR46 0.058 × 10-4 0.0469 12.4

αSTEPはイナーシャ比を30以下まで許容できるため、装置のコンパクト化に貢献できます。
仕様詳細は、RKⅡシリーズと同じく、個別カタログに掲載しています。

ARシリーズ カタログPDFダウンロード(ログイン不要)

PSギヤードタイプやPNギヤードタイプのほかにも、複数のギヤードタイプをご用意しています。
ギヤードタイプには、モーターの分解能を調整すること以外にも、様々なメリットがあります。詳しくはこちら

以上でモーターの選定計算は終了です。
最後に、カタログ上で、ドライバタイプ・電源電圧・ケーブルの長さ・付加機能の有無などを選択し、品名を確定してください。
RKⅡシリーズの品名の見方はこちら

また当社では、ステッピングモーターと機構(ボールねじ機構、回転機構など)を組み付けた、電動アクチュエータをご用意しています。
機構部品の選定や図面の作成にかかる時間が短縮され、設計の生産性向上に貢献します。
電動アクチュエータのラインアップについては、こちらをご参照ください。

コース内容にもとづいた練習問題(解答付き)をご用意しています。理解度の確認や、復習用としてご活用ください。
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