ステッピングモーター 選定計算編
5相ステッピングモーターRKIIシリーズの選定を例として、ステッピングモーターの選定計算手順を説明します。
3-4. 負荷慣性モーメントの算出
駆動機構の条件をもとに、負荷慣性モーメントを算出します。慣性モーメントは、機構と搬送物のそれぞれに発生します。
それぞれの慣性モーメントを求めた後、それらの値を合計し、装置の全負荷慣性モーメントを求めます。
全負荷慣性モーメントの値は、3-5. 加速トルクの算出や5-2. イナーシャ比の確認に必要です。
機構の慣性モーメントの求め方
機構の慣性モーメントは以下の計算式で算出します。
・ 円柱の慣性モーメントの計算式
【円柱の質量がわかる場合】

【円柱の質量が不明の場合】
・ インデックステーブルの慣性モーメントの計算式
※ 上記以外の慣性モーメントの計算式については、技術資料に掲載しています。
- Jx
- : x軸に関する慣性モーメント
- Jy
- : y軸に関する慣性モーメント
- m
- : テーブルとワークの総重量 [kg]
- D1
- : 外径 [m]
- L
- : 長さ [m]
- DT
- : インデックステーブルの直径 [m]
- LT
- : インデックステーブルの厚さ [m]
- ρ
- : 密度 [kg/m3]
-
鉄 7.9 × 103 黄銅 8.5 × 103 ステンレス 8.0 × 103 アルミ 2.8 × 103 ナイロン 1.1 × 103
ワークの慣性モーメントの求め方
実際に搬送するワークの慣性モーメントは以下の計算式で算出します。
直動機構の場合は、搬送テーブルの慣性モーメントも含みます。
・ 直動運転する物体の慣性モーメントの計算式
・ インデックステーブル上のワークの慣性モーメント
インデックステーブルでは、テーブルの回転中心回りの慣性モーメントを算出するとき、まずワーク中心軸回りの慣性モーメントを求める必要があります。
【ワーク中心軸回りの慣性モーメント】
上の式で求めた値をもとに、テーブルの回転中心回りの慣性モーメントを算出します。
【テーブルの回転中心回りの慣性モーメント】
※ 上記以外の慣性モーメントの計算式については、技術資料に掲載しています。
- A
- : モーター軸1回転あたりの移動量 [m]
- m
- : テーブルとワークの総重量 [kg]
- DW
- : ワークの直径 [m]
- MW
- : ワークの質量 [kg]
負荷慣性モーメントの計算例
- 手順
- ① 機構の慣性モーメントを求める
- ② ワークの慣性モーメントを求める ※ 直動駆動の場合、搬送テーブルの慣性モーメントを含む
- ③ 全負荷慣性モーメントを求める
ボールねじの慣性モーメント(JB)を求める
機構条件をもとに、ボールねじの慣性モーメント(JB)を求めます。
- ρ(密度・鉄) : 7.9 × 103 [kg/m3]
- LB(ボールねじの全長) : 600 [mm]
- DB(ボールねじの軸径) : 15 [mm]
テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を求める
機構条件をもとに、テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を求めます。(※ 搬送テーブルの慣性モーメントを含む)
- PB(ボールねじのリード) : 20 × 10-3 [m]
全負荷慣性モーメント(JL)を求める
ボールねじの慣性モーメント(JB)と、テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を合計し、全負荷慣性モーメント(JL)を求めます。
プーリーの慣性モーメント(JP)を求める
機構条件をもとに、プーリーの慣性モーメント(JP)を求めます。
- ρ(密度・アルミ) : 2.8 × 103 [kg/m3]
- L(長さ=プーリーの幅) : 20 × 10-3 [m]
- D1(外径=プーリーの直径) : 31.85 × 10-3 [m]
テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を求める
機構条件をもとに、テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を求めます。(※ 搬送テーブルの慣性モーメントを含む)
- D(プーリーの軸径) : 31.85 [mm]
- ※ A(モーター軸1回転あたりの移動量)の算出に必要です
全負荷慣性モーメント(JL)を求める
プーリーの慣性モーメント(JP)と、テーブルとワークの慣性モーメント(JT)を合計し、全負荷慣性モーメント(JL)を求めます。
従動プーリーを考慮し、プーリーの慣性モーメント(JP)を2倍にして計算します。
インデックステーブルの慣性モーメント(JT)を求める
機構条件をもとに、インデックステーブルの慣性モーメント(JT)を求めます。
- ρ(密度・アルミ) : 2.8 × 103 [kg/m3]
- LT(インデックステーブルの厚さ) : 7 × 10-3 [m]
- DT(インデックステーブルの直径) : 200 × 10-3 [m]
ワーク中心軸回りの、テーブル上のワークの慣性モーメント(JW1)を求める
機構条件をもとに、ワーク中心軸回りの、テーブル上のワークの慣性モーメント(JW1)を求めます。
- MW(ワークの質量) : 0.1 [kg]
- DW(ワークの直径) : 20 × 10-3 [m]
テーブルの回転中心回りの、テーブル上のワークの慣性モーメント(JW)を求める
機構条件をもとに、テーブルの回転中心回りの、テーブル上のワークの慣性モーメント(JW)を求めます。
- MW(ワークの質量) : 0.1 [kg]
- l(テーブルの中心からワークの中心までの距離) : 40 × 10-3 [m]
全負荷慣性モーメント(JL)を求める
インデックステーブルの負荷慣性モーメント(JT)と、テーブル上のワークの負荷慣性モーメント(JW)を合計し、全負荷慣性モーメント(JL)を求めます。
ワークは個数は4のため、テーブル上のワークの負荷慣性モーメント(JW)を4倍にして計算します。
ここで求めた値をもとに、次のページでは、加速トルクを求めます。
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