5-1. 加減速レートの確認

5相ステッピングモーターRKIIシリーズの選定を例として、ステッピングモーターの選定計算手順を説明します。
より安心して使用するために、加減速レートとイナーシャ比を確認します。

選定したモーターの加減速レートが適正であるか、確認します。(加減速レートについての詳細はこちらを参照してください)
加減速レートの確認には、3-2. 運転パターンの確認で設定した運転パターンの要素を使用します。

加減速レート(TR)の計算式

\(\bbox[5pt, border: 1px solid black]{\begin{align} \text { 加減速レート }{T_R} = \frac{\text{加速(減速)時間}\ [\mathrm{ms}]} {\text{運転パルス速度}\ [\mathrm{kHz}] - \text { 起動パルス速度 }[\mathrm{kHz}]} \end{align}}\)
  • ※ 運転パルス速度はフルステップ換算で計算してください

加減速レート(参考値)

対象機種 取付角寸法 [mm] 加減速レートTR [ms/kHz]
αSTEP 28(30)、42、60、85(90) 0.5以上
5相ステッピングモーター
(モーター/ドライバ)
20、28、42、60 20以上
85(90) 30以上
2相ステッピングモーター
(モーター/ドライバ)
20、28(30)、35、42、50、56.4、60 50以上
85(90) 75以上

ご注意

加減速レートが上表の参考値未満の場合、モーターの脱調、整定時間の増加などにつながる恐れがあります。
計算結果が目安値を満たさない場合は、3-2. 運転パターンの確認において加速(減速)時間の設定を見直してください。

加減速レートの計算例

加減速レート(TR)を確認する

3-2. 運転パターンの確認で設定した運転パターンをもとに、加減速レート(TR)を確認します。

運転パルス速度 [kHz] f2 = 10 加減速レートの目安(参考値)
[ms/kHz]
20以上
起動パルス速度 [kHz] f1 = 0
加速(減速)時間 [ms] t1 = 250
\(\begin{align}\text { 加減速レート }{T_R} & = \frac{\text{加速(減速)時間}({t_1})\ [\mathrm{ms}]} {\text{運転パルス速度}({f_2})\ [\mathrm{kHz}] - \text { 起動パルス速度 }({f_1})\ [\mathrm{kHz}]}\\[ 5pt ] & = \frac{250\ [\mathrm{ms}]}{10\ [\mathrm{kHz}]-0\ [\mathrm{kHz}]}\\[ 5pt ] & = 25\ [\mathrm{ms} / \mathrm{kHz}] \end{align}\)

選定した、RKS564RKS566RKS569は、加減速レートが20[ms/kHz]以上のため、使用可能です。

3-2. 運転パターンの確認で設定した運転パターンをもとに、加減速レート(TR)を確認します。
ただし、運転パルス数[step]や運転速度[Hz]は、マイクロステップ(0.36°/step)時のものとしてパターンを作成しているため、まずはこれらの条件をフルステップ(0.72°/step)の条件で再計算する必要があります。

機構条件の一覧を表示する

フルステップ時の運転パルス数(A)を求める

ステップ角を0.72[°/step]として、フルステップ時の運転パルス数(A)を求めます。

\(\begin{align}\text { フルステップ時の運転パルス数 }\mathrm{A} & = \frac{\text{送り量}({l})\ [\mathrm{mm}]}{\text{モーター1回転あたりの移動量}\ [\mathrm{mm}]}\ \times\ \frac{360\ [{ ^\circ }\ ]}{\text{ステップ角}\ [^{\circ}/\mathrm{step}]}\\[ 5pt ] & = \frac{200\ [\mathrm{mm}]}{\pi\ \times\ 31.85\ [\mathrm{mm}]}\ \times\ \frac{360\ [{ ^\circ }\ ]}{0.72\ [^{\circ}/\mathrm{step}]}\\[ 5pt ] & = 1000\ [\text{パルス}]\end{align}\)

機構条件

  • l(送り量) : 200 [mm]
  • D(プーリーの直径) : 31.85 [mm]

フルステップ時の運転パルス速度(f2)を求める

機構条件と、フルステップ時の運転パルス数(A)をもとに、フルステップ時の運転パルス速度(f2)を求めます。

\(\begin{align}\text { フルステップ時の運転パルス速度 }\mathrm{f_2} & = \frac{\text{運転パルス数}(\mathrm{A})\ [\text{パルス}]\ -\ \text { 起動パルス速度 }({f_1})\ [\mathrm{Hz}]\ \times\ \text{加速(減速)時間}({t_1})\ [\mathrm{s}]}{\text{位置決め時間}({t_0})\ [\mathrm{s}]\ -\ \text{加速(減速)時間}({t_1})\ [\mathrm{s}]}\\[ 5pt ] & = \frac{1000\ [\text{パルス}]-\ 0\ [\mathrm{Hz}] \times\ 0.1\ [\mathrm{s}]}{0.4\ [\mathrm{s}]\ -\ 0.1\ [\mathrm{s}]}\\[ 5pt ] & = 3333\ [\mathrm{Hz}]\end{align}\)

機構条件

  • t0(位置決め時間) : 0.4 [s]
  • f1(起動パルス速度) : 0 [kHz]
  • t1(加速(減速)時間) : 0.1 [s]

加減速レート(TR)を確認する

フルステップ時の運転パルス数(A)と運転パルス速度(f2)をもとに、加減速レート(TR)を求め、値を確認します。

運転パルス速度 [kHz] f2 = 3.333 加減速レートの目安
(参考値)
[ms/kHz]
RKS566 20以上
起動パルス速度 [kHz] f1 = 0 RKS569
加速(減速)時間 [ms] t1 = 100 RKS596 30以上
\(\begin{align} \quad\text { 加減速レート }{T_R} & = \frac{\text{加速(減速)時間}({t_1})\ [\mathrm{ms}]} {\text{運転パルス速度}({f_2})\ [\mathrm{kHz}] - \text { 起動パルス速度 }({f_1})\ [\mathrm{kHz}]}\quad\\[ 5pt ] & = \frac{100\ [\mathrm{ms}]}{3.333\ [\mathrm{kHz}]-0\ [\mathrm{kHz}]}\\[ 5pt ] & = 30\ [\mathrm{ms} / \mathrm{kHz}] \end{align}\)

選定した、RKS566RKS569は、加減速レートが20[ms/kHz]以上、RKS596は30[ms/kHz]以上のため、使用可能です。

加減速レート(TR)を確認する

3-2. 運転パターンの確認で設定した運転パターンをもとに、加減速レート(TR)を確認します。

運転パルス速度 [kHz] f2 = 0.333 加減速レートの目安(参考値)
[ms/kHz]
20以上
起動パルス速度 [kHz] f1 = 0
加速(減速)時間 [ms] t1 = 100
\(\begin{align}\text { 加減速レート }{T_R} & = \frac{\text{加速(減速)時間}({t_1})\ [\mathrm{ms}]} {\text{運転パルス速度}({f_2})\ [\mathrm{kHz}] - \text { 起動パルス速度 }({f_1})\ [\mathrm{kHz}]}\quad\\[ 5pt ] & = \frac{100\ [\mathrm{ms}]}{0.333\ [\mathrm{kHz}]-0\ [\mathrm{kHz}]}\\[ 5pt ] & = 300\ [\mathrm{ms} / \mathrm{kHz}] \end{align}\)

選定したRKS566は、加減速レートが20[ms/kHz]以上のため、使用可能です。

次ページでは、選定したモーターのイナーシャ比を確認します。

内容についてご不明点はありませんか?お気軽にお問合せください。