モーターの選定 選定のポイント

各機種はそれぞれの特性が異なるため、選定時のポイント(確認項目)も異なります。

ACモーター

①負荷による回転速度の変動

ACモーターの実際の回転速度は、負荷トルクの影響を受けて同期回転速度より数パーセント低下します。
ACモーターを選定するときは、このような回転速度の低下が発生するという前提で選定する必要があります。

②時間定格

同じ出力のモーターでも、モーターの種類によって連続定格・短時間定格の違いがあります。駆動時間(パターン)から選定する必要があります。

③ギヤヘッドの許容負荷慣性モーメント

モーターにギヤヘッドを組み付けて瞬時停止(ブレーキパックなど)や頻繁な断続運転、瞬時正逆運転などをおこなう場合、負荷の慣性モーメントが過大になるとギヤヘッドが破損する可能性があります。ギヤヘッドは許容負荷慣性モーメントが定められていますので、この数値以下になるように選定する必要があります。

ブラシレスモーター

①許容トルク

モーターにギヤヘッドを組み付けた製品においては、ギヤヘッド出力軸での許容トルクを一覧表で掲載しています。負荷トルクが許容トルクを超えない製品を選定してください。

②許容慣性モーメント

ブラシレスモーターは減速時の回生電力によるアラーム作動の回避や安定した速度制御のために許容慣性モーメントが定められています。慣性モーメントが許容値を超えない製品を選定してください。
モーターにギヤヘッドを組み付けた製品の場合、負荷の慣性モーメントが過大になるとギヤヘッドが破損する可能性があります。ギヤヘッド取付時の許容慣性モーメントが定められていますので、この値を超えない製品を選定してください。

③実効負荷トルク

BXⅡシリーズを頻繁に運転・停止する場合は、実効負荷トルクが定格トルクを超えないようにしてください。超えた場合は過負荷保護機能が作動し、モーターが停止します。

αSTEP/ステッピングモーター

①必要トルクの確認

αSTEP、ステッピングモーターは、プルアウトトルクの内側に運転速度NM(f2)と必要トルクTMで表される運転領域が収まるモーターを選定します。

安全率Sfの目安

対象 安全率(目安)
αSTEP 1.5~2
2相5相ステッピングモーター 2
①必要トルクの確認

②温度上昇への配慮

αSTEP、ステッピングモーターは長時間にわたって連続運転すると温度上昇が高くなり、モーター内部の絶縁階級の温度(B種130℃)を超え、絶縁性能が劣化することがあります。運転速度、負荷条件や取付状態により、上昇する温度は異なります。目安として運転デューティが50%以下になるように選んでください。運転デューティが50%を超える場合は、トルクに十分な余裕があるモーターを選び、運転電流を下げて使う方法があります。

\(\begin{align} \text{運転デューティ}= \frac{運転時間}{\text{運転時間}+\text{停止時間}} \times 100 \end{align}\)

③加減速レートの確認

αSTEP、ステッピングモーターは、運転速度NMと必要トルクTMで表される運転領域がプルアウトトルクの内側に収まっていれば、目的の装置を運転できます。ただし、パルス信号は、加減速時のパルス速度が階段状に変化する場合があり、急激な加減速になるほど段差が大きくなります。このため、大きな負荷慣性モーメントが付いた条件では、急激な加減速を指示しても運転できない可能性があります。そこで、選定したモーターがより確実に運転できるように、加減速レートが下表の参考値以上であることを確認します。

加減速レート(参考値)

対象 取付角寸法 加減速レート
TRS[ms/kHz]
αSTEP 20, 28(30),
42(40),
60,
85(90)
0.5 以上
5相ステッピングモーター 20(φ22),
28(30),
42(51),
56.4,
60(61)
20以上
85(90) 30以上
2相ステッピングモーター 20, 28(30),
35, 42(51),
50, 56.4,
60(61)
50以上
85(90) 75以上

ギヤードタイプの場合も上記加減速レートになります。ただし、ハーフステップやマイクロステップでご使用の場合は下記の換算が必要になります。

\(\begin{align} T_{RS} \cdot \frac{\theta_S}{\theta_B} \cdot i \end{align}\)
TRS
加減速レート [ms/kHz]
θS
ステップ角度(分解能)[°/step]
θB
下表参照
i
ギヤードタイプの減速比

係数

対象 θB
αSTEP 0.36°
5相ステッピングモーター 0.72°
2相ステッピングモーター 1.8°
  • ※ ギヤードモーターの場合、ギヤ出力軸上におけるステップ角度(分解能)になります

④イナーシャ比の確認

イナーシャ比は次の計算式で求めます。

\(\begin{align} \text{イナーシャ比} = \frac{J_L}{J_0} \end{align}\)

ギヤードモーターの場合

\(\begin{align} \text{イナーシャ比} = \frac{J_L}{{J_0}\cdot i^2} \quad\quad i:\text{減速比} \end{align}\)

αSTEP、ステッピングモーターはイナーシャ比が大きいと、起動時や停止時のオーバーシュートやアンダーシュートが大きくなり、立ち上がり時間やセットリングタイムに影響を与える場合があります。また、パルス信号は、加減速時のパルス速度が階段状に変化する場合があり、急激な加減速になるほど段差が大きくなります。このため、イナーシャ比が大きいと運転できない可能性があります。そこで、選定したモーターがより確実に運転できるようイナーシャ比が下表の参考値以下であることを確認します。

イナーシャ比(参考値)

対象 取付角寸法 イナーシャ比
αSTEP 20, 28, 42, 60, 85 30以下
2相5相ステッピングモーター 20, 28, 35 5以下
42, 50, 56.4, 60, 85 10以下

表中の値を超える場合には、ギヤードタイプのご使用をおすすめします。

サーボモーター

①許容負荷慣性モーメント

サーボモーターは安定した制御をおこなうために許容負荷慣性モーメントが定められています。サーボモーターは、負荷慣性モーメントがこの許容値を超えないように選定してください。

対象 許容負荷慣性モーメント
AZXシリーズ
NXシリーズ
ローター慣性モーメントの50倍以下
  • ※ オートチューニングではローター慣性モーメント比50倍、マニュアルチューニングでは100倍まで対応できます(NXシリーズ)。

②定格トルク

負荷トルクTLとサーボモーターの定格トルクとの比が1.5~2以上を目安に選定します。

\(\begin{align} \frac{\text{定格トルク}}{\text{負荷トルク}} \geqq 1.5 \text{~} 2 \end{align}\)

③瞬時最大トルク

必要トルクがサーボモーターの瞬時最大トルク以下であることを確認してください。(このとき必要トルクの安全率Sfは1.5~2を目安にしてください。)また、瞬時最大トルクを使用できる時間はモーターによって異なりますのでご注意ください。

瞬時最大トルクと使用時間

対象 使用時間 瞬時最大トルク
AZXシリーズ
NXシリーズ
約0.5秒以内 定格トルクの3倍時(定格回転速度時)
  • ※ AZXシリーズ 定格出力600Wタイプは定格トルクの3.75倍です。

④実効負荷トルク

実効負荷トルクとサーボモーターの定格トルクとの比である実効負荷安全率が1.5~2以上を目安に選定します。

\(\begin{align} \text{実効負荷安全率} =\frac{\text{定格トルク}}{\text{実効負荷トルク}} \end{align}\)

⑤整定時間

サーボモーターは位置指令に対し実際のモーターの運転に遅れがあります。この差を整定時間と呼んでいます。したがって、運転パターンから計算される位置決め時間にこの整定時間を加算したものが、実際の位置決め時間になります。

⑤整定時間
  • 機械剛性設定スイッチでゲインパラメータを変更した場合は、整定時間は変化します。

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