感電保護に関する設置条件、保護等級

1. 過電圧カテゴリ

EN 60664-1(Insulation coordination for equipment within low-voltage supply systems - Part 1: Principles, requirements and tests)に基づき、機器が直接接続される電源受電部において発生する過渡的な過電圧の度合いによって次のように分類されます。

過電圧カテゴリⅠ:
安定化電源など、過渡過電圧が十分低いレベルに確実に制限されている回路に接続する機器。(当社のDC入力製品は、これに該当します。)
過電圧カテゴリⅡ:
絶縁型トランスを介した二次回路など、過渡過電圧が発生する可能性が低い回路に接続する機器。(当社のAC入力製品の大部分は、これに該当します。)
過電圧カテゴリⅢ:
絶縁型トランスを介さない一般工場の配電盤からの給電など、過渡過電圧の発生が予想される回路に接続する機器。(当社のAC入力製品の一部は、これに該当します。)

2. 汚損度

EN 60664-1(Insulation coordination for equipment within low-voltage supply systems - Part 1: Principles, requirements and tests)に基づき、機器が使用される環境の度合いを表します。

汚損度1:
汚損となる物質は完全に無く、常に乾燥しており、汚損による機器への影響は考えられない(クリーンルーム等)。
汚損度2:
多少の汚損となる導電物質があり、ときにはそれらが機器への影響をもたらすと考えられる(事務所、研究所等)。
汚損度3:
汚損となる導電物質があり、それらが機器への影響をもたらすと考えられる(ボイラー室、一般工場)。

ただし、汚損度2の環境で使用される機器においても、その機器の構造により機器内で汚損が生じる場合は、機器として低い汚損度に対応させる設計が必要になります。

3.感電保護クラス

EN 61140(Protection against Electric Shock - Common Aspects for Installation and Equipment)では機器の感電に対する保護方法として、次のようにクラス分けされます。(Protection Class)

クラスⅠ機器
(ClassⅠ
equipment):
感電に対する保護を、基礎絶縁のみで保護し、基礎絶縁が破損した場合に、危険電圧が加わる恐れのある導電部を保護接地線に接続するようになっている機器。
クラスⅡ機器
(ClassⅡ
equipment):
感電に対する保護を、基礎絶縁のみに頼るのではなく、付加絶縁を使用した二重絶縁または、強化絶縁といった安全対策を講じている機器であって、保護接地または、設置状態に頼ることをしていない機器。
クラスⅢ機器
(ClassⅢ
equipment):
感電に対する保護をSELV回路からの電源供給に頼っている機器であって、機器内に危険電圧が存在しない機器。

4.保護等級(IP)

保護等級は電気機器の危険な部分への人体の接触保護、機器内部への固形異物侵入の保護、水の浸入に対する保護の程度を表します。一般的な電気機器の保護等級はEN 60529によってIPコードとして規定されています。回転部をもつ電気機器であるモーターの保護等級はEN 60034-5で規定されています。

IP記号の表示例

なお、保護の等級について一方を特定しないで示す場合には、IPX5、IP4Xのようにその記号をXで表します。

表-3 IPコードの意味および試験条件
IPコード 危険な部分への人体の接触保護、内部への固形異物侵入の保護
第一特性数字 保護の程度 試験条件
IP0X なし なし
IP1X 手の接近からの保護 直径50mm以上の固形異物が侵入しない
IP2X 指の接近からの保護 直径12mm以上の固形異物が侵入しない
IP3X 工具の先端などからの保護 直径2.5mm以上の固形異物が侵入しない
IP4X ワイヤーなどからの保護 直径1.0mm以上の固形異物が侵入しない
IP5X 粉塵からの保護 正常動作を阻害するような粉塵の侵入が無い
IP6X 完全な防塵構造 粉塵の侵入が完全に防護されている
IPコード 水の浸入に対する保護
第二特性数字 保護の程度 試験条件
IPX0 なし なし
IPX1 垂直に落下する水滴からの保護 200mmの高さより3~5mm/分の水滴、10分間
IPX2 垂直より15°の範囲の水滴からの保護 200mmの高さより15°の範囲、3~5mm/分の水滴、10分間
IPX3 垂直より60°の範囲の降雨からの保護 200mmの高さより60°の範囲、10ℓ/分の放水、10分間
IPX4 全方向の飛まつ水からの保護 300~500mmの距離より全方向に10ℓ/分の放水、10分間
IPX5 全方向の噴流水からの保護 3mの距離から全方向に12.5ℓ/分・30kPaの噴流水、3分間
IPX6 波浪または強力なジェット噴流水からの保護 3mの距離から全方向に100ℓ/分・100kPaの噴流水、3分間
IPX7 一定の条件で水没しても使用可能 水面下1m、30分間
IPX8 水面下での使用が可能 使用者と製造者の協議による

防水試験(IP4、IPX5、IPX6)の様子を、動画でご覧いただけます。