モーターによってオーバーランは違うんですか?


-
照代さ~ん。基本的なことなんですが、モーターの「オーバーラン」について分からないことがあって・・・。
-
何かしら?
-
えっと~、モーターを停止させるときに、電源を切ってからモーターが完全に停止するまでの回転量のことを「オーバーラン」っていうんですよね?
-
そうよ。オーバーランはモーター軸にかかる負荷慣性モーメントが大きくなるほど大きくなってしまうの。
-
え?負荷慣性モーメントが関係するのですか?
-
そうよ。例えば、荷物を載せているトラックと、載せていないトラック。同じ速度で急停止させた場合に、荷物を載せたトラックの方が停止するまでの距離が長くなるでしょ。これと同じで、モーターも負荷慣性モーメントの大きな方がオーバーランは大きくなってしまうの。
-
なるほど!通常、モーターのオーバーランはどのくらいの量になるんですか?
-
モーターの種類によっても違いがあるのよ。 インダクションモーターのオーバーランは、負荷慣性モーメントがない場合で約30~40回転ね。
-
モーターによってオーバーランは違うんですか?!
-
そうよ。レバーシブルモーターの場合では、約5~6回転になるわね。
-
えっ、どうして、レバーシブルモーターはインダクションモーターよりオーバーランが小さいのですか?
-
レバーシブルモーターは、回転方向を瞬時に切り替えられるように簡易ブレーキを内蔵しているでしょ。だから、インダクションモーターに比べてオーバーランは小さくなるのよ。
-
なるほど。ところで、「簡易ブレーキ」って、どんなブレーキですか?
-
ローターにブレーキ板が取り付けられていて、これにブレーキシューを押し付けているの。

-
へぇー。このオーバーランはモーター軸の回転数ですか!
ギヤヘッドを使用した場合ではオーバーランはどうなるんですか? -
いいところに気づいたわね!そうよ、モーター軸の回転数を表しているわ。だから、ギヤヘッドを一緒に使った場合の出力軸のオーバーランは、ギヤヘッドの「減速比分の1」になるのよ。
-
ということは、例えばインダクションモーターに減速比1:3のギヤヘッドを使用した場合、ギヤヘッド出力軸のオーバーランは約10~13回転になるってことですよね。
-
そういうこと。ギヤヘッドの減速比が大きくなるほどオーバーランは小さくなるの。ただし、回転速度も減速比分の1になるので、運転速度が遅くなってしまう。つまり、生産量が下がってしまうの。お客様には充分に検討していただく必要があるわね。
回転速度を変えずにオーバーランだけを小さくするのであれば、電磁ブレーキ付モーターを使用したり、ブレーキパックを併用する方法があるわね。 -
あっ!この前、教えてもらいました。
機械的に保持する電磁ブレーキ付モーターと、制動電流を流して瞬時停止させるブレーキパックですよね。 -
そうね。電磁ブレーキ付モーターのオーバーランは約2~3回転、ブレーキパックでは約1~1.5回転になるわね。
-
そうでした。オーバーランをポイントに見ても、モーターによってこんなに違うんですね。
モーター種類別オーバーラン一覧(参考値)
インダクション モーター |
レバーシブル モーター |
電磁ブレーキ付 モーター |
ブレーキ パック併用 |
|
---|---|---|---|---|
無負荷時 モーター単体 |
約30~40 回転 |
約5~6 回転 |
約2~3 回転 |
約1~1.5 回転 |
減速比1:3の ギヤヘッド取付時 |
約10~13 回転 |
約1.7~2 回転 |
約0.7~1 回転 |
約0.3~0.5 回転 |
-
モーターは用途によって使い分けることが必要ね。だから、お客様からお問い合わせをいただいたときは、使用条件をきちんと確認して適切なモーターをご紹介できるように頑張ってね!
-
はい!頑張ります。ありがとうございました。