どうして、減速比によって回転方向がちがうんですか?


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新入社員 う~ん。う~ん。
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何を悩んでいるの??

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新入社員 あ、学先輩、照代先輩!!聞いてくださいよ~。
お客様から「低速運転しようと減速比の大きいギヤヘッドに交換したら逆回転をするようになった」とお問い合せがあったんです。奇怪な事件です!!配線は触っていないし・・・、コンデンサもそのままだし・・・。他に何か原因があるのか悩んでるんです。 -
製品名は何だった?
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新入社員 5IK60GU-AWJのモーターに取り付いていた5GU60KBのギヤヘッドを、5GU75KBのギヤヘッドに交換したんです。
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総合カタログは見てみたの?
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新入社員 はい。一通り見ましたけど・・・。見るポイントがあるのですか?
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総合カタログ2004/2005(A-41ページ)に掲載されている『ギヤヘッド取付時の許容トルク』の表、減速比によって色分けされているのは気が付いた?
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新入社員 あれ?本当だ・・・。どうしてですか?
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緑色で塗られた減速比はモーター軸と同じ方向に回転をすることを、色が塗られていない減速比はモーター軸と逆の方向に回転をすることを表わしているんだよ。
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新入社員 え?どうして、減速比によって回転方向が違うのですか?
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ギヤヘッドは歯車を利用して減速しているよね。歯車の歯数の比率が減速比で、この減速比を大きくするためには、歯数の比率を大きくする必要があるんだ。つまり、駆動側の歯車は歯数を少なくし、非駆動側の歯車は歯数を多くするってこと。
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新入社員 はい。
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でも、歯数を少なくするには限界があるし、歯数を多くするにもモーターとの取付角寸法などに制限がある。そこで、歯車の減速段数を増やして、減速比の大きなギヤヘッドを設計しているんだよ。だから、減速比によって段数が異なり、奇数段ではモーター軸と逆の方向に回転し、偶数段ではモーター軸と同じ方向に回転するんだ。
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新入社員 なるほど・・。わかりました!ありがとうございます!!早速お客様にお電話してみます。
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また、何か分からないことがあったら何でも聞いてよ。
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すごいじゃない、学くん。しっかり新入社員に教えることができてるわね。
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そんなぁ。それほどでも。先輩として当然ですよ!
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新入社員 あれ?
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どうしたの?
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新入社員 ギヤヘッドって、減速比が大きくなるほどトルクが増えていくものでしたよね。
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そうだよ。何で?
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新入社員 この『ギヤヘッド取付時の許容トルク』の50Hzを見てると、1/75から1/180まですべて同じトルクなんですよ。どうしてですか?
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え??あ、本当だ!どうしてだろう・・・?
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まだまだね、学くん。
ギヤヘッドの出力トルクは、減速比が大きくなると、それに比例して大きくなるけど、歯車の材質やその他の条件によってギヤヘッドに掛けられる負荷トルクの大きさに限界があるのよ。この限界のトルクを最大許容トルクと言って、5IK60GU-AWJと5GU□KBの場合、20N・mがその値になると言うわけ。 -
新入社員 そうなんだー。
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それにね、ギヤヘッドのトルクというのは、単純に減速比に比例して増えていくわけではないのよ。ギヤヘッドの伝達効率にも関係してるの。
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新入社員 伝達効率??
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そう、歯車から歯車へトルクを伝達するときの効率のことよ。歯のかみ合いや軸受けなどの損失で、100%伝達することはできないの。学くんが減速比を大きくするために歯車の段数を増やすという話をしてたわよね。その段数を増やすことによって、伝達効率が低くなってしまうの。だから、ギヤヘッドのトルクを計算するときにはこの伝達効率を忘れてはいけないのよ。
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新入社員 ありがとうございます!照代先輩!
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いいえ。どういたしまして。頑張ってね!
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新入社員 はい!ありがとうございます!!
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はぁ~。僕はまだまだですね。照代さん、これからもいろいろ教えてください!