ステッピングモーターには、どうして出力(W数)表示がないんですか?
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照代さ~ん。実はお客様から「どうしてステッピングモーターには、出力(W数)表示がないんですか?」という質問を受けたんです。それでいま調べているところなんですよ。
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あら、聞く前にまず自分で調べるなんて、学くん成長したじゃない。
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あの・・・、調べてはいるのですがよくわからなくて・・・。照代さん、教えてください!
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わかったわ。メモの用意はいい?ステッピングモーターに出力(W数)表示がない理由を一言でいえば、「定格回転速度」という考え方がないからなの。ACモーターやサーボモーターの出力(W数)表示は、「定格回転速度」で回っているときの出力(W数)を表示しているの。これを「定格出力」と言うのよ。出力(W数)自体は計算式で算出できるので、ステッピングモーターでも理論上では計算式から出力(W数)を導き出すことはできるの。でも、そもそも「定格回転速度」という考え方がないので、「定格出力」すなわち出力(W数)を表示することができないのよ。
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出力(W数)計算式は、出力=回転速度×トルク×定数 というもので、
出力 [W] =0.1047×T×N
0.1047: 定数
T [N・m]: トルク
N [r/min]: 回転速度
ここで言う「回転速度」と「トルク」というのは、
回転速度:ある時点での回転数
トルク:ある時点での回転数で発生するトルク
という意味よ。
だから、代入する「回転速度」の数値が異なると、算出される出力(W数)も変わるというわけなの。例えば、ステッピングモーターRKⅡシリーズRKS566AAの「回転速度-トルク特性」の図を参考に計算してみましょう(下図参照)。
- 回転速度1000r/min、トルク0.5N・m※として計算した場合、
0.1047×0.5×1000=52.3W
- 回転速度3000r/min、トルク0.2N・m※として計算した場合、
0.1047×0.2×3000=62.8W
- ※ ここでは、安全率を約2倍と設定して、必要トルクを2倍にしたときにプルアウトトルクを上回らないように選定しています。
●RKS566AAの回転速度-トルク特性
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あれ・・・ということは、ブラシレスモーターやサーボモーターのようにフラットトルク特性のあるモーターの場合も、代入する回転速度の数値が異なれば、出力(W数)が変わるということですか?
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そう!今度はブラシレスモーターBXⅡシリーズBXM230-A2(モーター)とBXSD30-A2(回路)の組み合わせで見てみましょう。カタログの仕様から定格出力は30W、そして「回転速度-トルク特性」の図からトルクは回転速度1000r/minのときも、3000r/minのときも同じ0.1N・mとなっているでしょ(下図参照)。
●BXM230-A2+BXSD30-A2の回転速度-トルク特性
- 回転速度1000r/minで計算した場合:0.1047×0.1×1000≒10W
と30Wに足りていないわ。でも
- 回転速度3000r/minで計算した場合:0.1047×0.1×3000≒30W
と30Wになるでしょ?
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あれ、フラットトルク特性のモーターなのに速度によって出力が変わるなんて・・・、だんだんわからなくなってきました・・・。
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この回転速度に代入する数値をどうするか? ということになるんだけど、そこで出てくるのが「定格回転速度」という考え方なの。ACモーターやブラシレスモーター、サーボモーターには、この「定格回転速度」という仕様値が明確になっているの。
- ACモーター(5IK40GV-JAの場合):50Hz時 1300r/min、 60Hz時 1550r/min
- ブラシレスモーター:3000r/min(一部製品によって異なります)
- サーボモーター:3000r/min
これら「定格回転速度」のときに発生するトルクを、出力計算式に代入して算出した出力を「定格出力(W数)」としてカタログ仕様値に表記しているというわけなの。
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そうなの。だから、「ステッピングモーターの出力(W数)を知りたい」というお客様には、実際にご使用になる回転速度の出力(W数)算出方法としてこの計算式をご紹介してもいいわ。でも、仮に出力(W数)を算出していただいても、「○○Wのサーボモーターから同等の出力のステッピングモーターに置き換えしたい」といったご質問を受けた場合には、出力(W数)だけでは比較検討ができないことをお伝えする必要があるの。特に、サーボモーターやブラシレスモーターには、ステッピングモーターにはない「瞬時最大トルク」というものがあるから、なおさら注意が必要なのよ。
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わかりました。その場合には、まずお客様に選定サービスをご紹介します。長く安心してオリエンタルモーターの製品を使っていただきたいですからね。
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そうね。最適な製品をご提案できるように、学くんもがんばってね。