巻き取りの機構ってどんなモーターを使えば良いですか?

おしえて!照代さん
おしえて!照代さん
  • 学くん

    困ったな。巻き取り用のモーターか。

  • 照代さん

    あら、学くん。お客様からお電話があったの?

  • 学くん

    照代さん、良いところに来てくれました。お客様から、社内の設備でフィルムを巻き取る機構にモーターを紹介してほしいとお問合せいただいたのですが、どんなモーターを紹介したら良いのか全然分からないんです。

  • 照代さん

    そう。確かに他の機構にはない特性が求められるから、初めてだと難しいわね。まず簡単なモデルを見ながら巻き取りに必要な要素を整理してみましょうか。

    巻き取り装置のモデル
  • 学くん

    お客様は「一定の送り速度、一定の張力で巻き取る」とおっしゃっていました。どうして一定の張力でないといけないんでしょうか。

  • 照代さん

    素材がたるまないよう張った状態にして、きれいに巻きたいということね。といっても、張り方が強すぎると素材が縮んだり切れたりするし、弱いとしわが寄ってしまったりするから、最初から最後まで常に一定の適正な張力がかかった状態で巻いていく必要があるの。

    張力が弱い場合、強い場合
  • 学くん

    なるほど、そういう意味なんですね。

  • 照代さん

    だから一定の張力を保つために、巻き取る一方で「適切なブレーキ力」も必要なのよ。こうすることによって、フィルムをぴんと張った状態で巻き取ることができるの。装置が違ってもこれが基本ね。

    適切なブレーキ力
  • 学くん

    「一定の張力」を実現できる巻き取りモーターとブレーキをどう選定するかがポイントなんですね。分かりました!でもこれ、巻き取るだけだったら一定速モーターでもできそうな気が…

  • 照代さん

    フィルムの張力や送り速度を一定にするのよね。本当にできるかしら。モーターの種類を決める前に、モーターに求められる特性について考えてみましょう。今まで説明で使ったモデルに、実際のフィルムを加えたものが下の図になるわ。

    実際のフィルムを加えた巻き取り装置
  • 学くん

    巻き始めの段階では、左のロールに全てフィルムがあるということですね。

  • 照代さん

    ここから巻き終わるまでが次の図よ。

    巻き取り装置の巻き途中、巻き終わり
  • 学くん

    巻き取っていくと右のロールの直径が段々と大きくなって、巻き終わりの状態では2倍になるという図ですね。フィルムの送り速度は50mm/sで一定ということかな。

  • 照代さん

    そうよ。じゃあ、巻き始めのモーターの回転速度を計算してみて。

  • 学くん

    え~っ、いきなりですか!?ええと、円周率が3.14で…

  • 照代さん

    このくらいはさっと計算できてほしいわね。
    送り速度÷(直径×円周率)×60を計算して9.55r/minになるわ。
    ちなみにこのときのトルクは、力と回転半径をかけて1.0N・mよ。
    同じやり方で、巻き途中と巻き終わりを計算してちょうだい。

  • 学くん

    ……できました。下の表のとおりです。

    巻き始め、巻き途中、巻き終わりの回転速度とトルク
  • 照代さん

    そうね。この表で大切なことは、巻き始めから巻き終わりの状態に進むにつれて、「回転速度は遅く」「トルクは大きく」なっていくということなのよ。だから、巻き取りモーターに必要な特性は下の図のようになるわ。

    巻き取りモーターに必要な特性
  • 学くん

    ええと、特性についてはよく分かったんですが、どんなモーターかという話は、できるんでしょうか。

  • 照代さん

    今回はなんと特大号で長編掲載なのよ!
    続いてモーターの種類を解説していくわ。意識を「ぴんと張って」ついてきてね。

  • 学くん

    は、はい!
    では照代さん、さきほどの特性を踏まえて…巻き取り軸にはどんなモーターを選んだらいいんでしょう。直径に合わせて回転速度を遅く、トルクは大きくしていく必要があるということは、一定速モーターではできないってことですよね。

  • 照代さん

    そうね。実は巻き取りを簡単にできちゃうぴったりの特性を持ったモーターがあるのよ。「トルクモーター」って知ってる?

  • 学くん

    えっ…名前だけは…(汗)詳しく教えてください!一体どんなところがぴったりなんでしょうか?

  • 照代さん

    下の「回転速度-トルク特性」を見て。トルクモーターの特性なんだけど、何か気づくことはないかしら?

    回転速度-トルク特性
  • 学くん

    え~と、回転速度が遅くなるほどトルクが上がっていますね。前半の最後に見た巻き取りモーターに必要な特性と似ています!

  • 照代さん

    良い所に気づいたわね。そうなの、トルクモーターは巻き取りモーターに必要な特性と近い特性を持っているのよ。必要な特性と「回転速度-トルク特性」が一致すれば、一定の送り速度、一定の張力で巻き取ることができるのよ。

  • 学くん

    そうなんですか!巻き取りモーターにぴったりですね。図上にいくつもトルク特性の線が引かれているのはどうしてなんですか?

  • 照代さん

    トルクモーターは、トルクを調節できるの。この図はトルクモーターユニット TMシリーズのものなんだけど、コントローラのボリュームでトルクを大きくしたり小さくしたり、簡単に調節できるのよ。

  • 学くん

    難しい制御はいらないんですね!巻き取りの軸に関してはよく分かりました。ブレーキにはどんなものをお勧めすれば良いんでしょうか。そもそもモーターではないから関係ないのかな…

  • 照代さん

    実はブレーキの用途にもトルクモーターが使えるのよ。巻き取る方向とは反対に回転させることによって、ブレーキとして使うことができるのよ。

    トルクモーターによるブレーキ力
  • 学くん

    トルクモーターってすごいんですね。…でもちょっと待ってください。この使い方なら一定速モーターでも良い気がします。

  • 照代さん

    実はここでもトルクモーターでないといけない理由があるの。他のモーターはブレーキとして使うと、熱くなってしまったり、保護機能がはたらいて止まってしまったりするのよ。

  • 学くん

    そうだったんですか!トルクモーターっていろいろな使い方ができるんですね。ブレーキとして使う場合には、どんな特性なんでしょうか。

  • 照代さん

    そうね。特性も知っておかないといけないわね。
    トルクモーターのブレーキとしての特性は右の図のようになるわ。

    そうね。特性も知っておかないといけないわね。
    トルクモーターのブレーキとしての特性は下の図のようになるわ。

  • 学くん

    回転速度が速くなってもブレーキ力はそんなに変わりませんね。

トルクモーターのブレーキ力
  • 照代さん

    そうなの。トルクモーターの特性の良いところは、回転速度が変化してもブレーキ力に大きな差がないということね。

  • 学くん

    お客様にはどんなメリットがあるんでしょうか。

  • 照代さん

    装置によっては、フィルムの送り速度を変えたり、途中で何かの処理をするために一度停止させたりする場合があるの。だから、送り速度によってブレーキ力が変わらないと便利なのよ。それに、巻き取りモーターとして使うときと同じようにブレーキ力を調節できるわ。

  • 学くん

    よく分かりました!巻き取りの機構の話が来たら、まずはトルクモーターを紹介してみます。他にはどんなモーターが使われますか。

  • 照代さん

    巻き取り機構のモーターには、ブラシレスモーターのBXⅡシリーズもよく使われているわ。このシリーズにはトルク制限という機能が付いていて、トルクモーターと同じような使い方ができるのよ。さらにトルク制限の値をデジタル値でドライバに書き込めるから、微調整をする手間が省けるわ。複数台使うときにはおすすめね。

  • 学くん

    トルクモーター以外にもブラシレスモーターが使えるんですね。ありがとうございました。お客様にぴったりなモーターを提案できそうです!

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