径方向誘導式ハイブリッド型を用いたステッピングモーターの高トルク化技術
2023年6月9日時点の情報です。
従来のハイブリッド型ステッピングモーターは、軸方向に着磁された磁石を歯車状の鉄心で挟みこむことで小歯に磁束を誘導し磁極を形成しています。これに対し、径方向に着磁した磁石を歯車状鉄心の小歯間に配置することで、磁束を誘導し磁極を形成する方法を開発しました。新設計手法では、従来のハイブリッド型ステッピングモーターよりも、磁路上の磁石断面積を大きくできます。磁石断面積の増加によりトルクに寄与する鎖交磁束が増加したため、従来のハイブリッド型に対する高トルク化を実現できます。製品化したPKPシリーズ高トルクタイプは、装置の小型・軽量化や繰り返し運転のタクトタイム短縮への貢献が期待されるだけでなく、損失低減、許容ラジアル荷重の向上、漏れ磁束低減などの特長もあります。本稿では、径方向誘導式を用いた高トルク化技術の原理と特長について説明します。
1. はじめに
ステッピングモーターは、オープンループで位置制御が可能なモーターです。代表的な構造に、PM型(永久磁石型)、VR型(可変リラクタンス型)、HB型(ハイブリッド型)の3種類があります。
PM型のローターは、表面に磁石を配置した構造で、磁石を活用するためトルクが大きいことが利点ですが、極小磁石の作製が困難なため分解能が低くなります。VR型のローターは、歯車状の小歯がついた鉄心で構成され、小歯の間隔を小さくして分解能を高くできることが利点ですが、磁石を使わないためトルクが小さくなります。HB型のローターは、歯車状鉄心に円盤状の磁石を挟みこんだ構造で(図4 参照)、PM型では困難な高分解能と、VR型では困難な高トルクを同時に実現しています。
現在、HB型ステッピングモーターは、産業用モーターとして、半導体製造装置や精密ステージなどさまざまな用途に使われています。設備や装置の改良や開発において、タクトタイムの短縮や小型・軽量化が求められます。そのため、高トルクのモーターが必要となります。
本稿では、オリエンタルモーターにおけるステッピングモーターの高トルク化の変遷について説明したあとで、径方向誘導式を用いたステッピングモーターの構造と磁気回路について説明し、最後に実験結果を交えながら特長を説明します。
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