ステッピングモーターの高精度位置決め技術 ― 外部センサを用いた機械端位置補正機能の開発 ―
2025年2月28日時点の情報です。
高精度位置決めを必要とする工程には、一般的にステッピングモーターやサーボモーターが使用されています。特にステッピングモーターは、オープンループでゲイン調整が不要であり、停止中の振動のない高精度な位置決めが可能であることから、半導体製造装置や医療分析器などの産業分野で幅広く使用されています。しかしながら、近年では半導体製造プロセスの微細化が進展し、ステッピングモーターに対する精度要求も高くなっているのが現状です。オリエンタルモーターでは、外部センサを用いた高精度な位置検出とオープンループによる位置決めの特長を活用した機械端位置補正機能を開発しました。本稿では、この機能を採用したCVDシリーズ フルクローズド制御タイプをもとに、ステッピングモーターの高精度位置決め技術について説明します。
1. はじめに
ステッピングモーターは、オープンループで位置決め制御が可能で、モーターへの負荷変動が大きい場合でもゲイン調整が不要です。そのため、低剛性な機構でも使いやすく、簡単にシステムを構築できます。
しかしながら、ギヤやボールねじといった機構を組み合わせた場合は、バックラッシなどの影響によるロストモーションや、ピッチ誤差、機構部の温度変化・膨張などにより、精度要求に応えづらいという側面があります。
近年では、半導体製造プロセスの微細化が進展し、ステッピングモーターに対する精度要求も高くなっています。このような、位置の信頼性を重視する用途では、ステッピングモーターをエンコーダなどで位置を監視しながら、上位制御機器側で逐次位置調整の指令を行う方式が採用されています。しかし、この場合にはシステム全体が複雑となり、簡易性が失われます。
あるいは、外部センサにより機械端の位置を直接フィードバックしたサーボモーターを用いて、フルクローズドループ方式のフィードバック制御によるシステムが採用されています。この場合には、サーボモーターを使用することからステッピングモーターと比較してコストが高くなります。加えて、機構の剛性が低い負荷ではシステムの安定性を保つのが難しく、ゲイン調整も困難で停止中の振動が発生する欠点も持っています。
このことから、外部センサを用いた既存の手法で高精度位置決めを行う際に、ステッピングモーターを用いる場合は、システムが複雑になります。一方、サーボモーターを用いる場合は、システムの安定性を保つために、負荷条件によってはゲイン調整が必要となり、コスト面の問題と両立した解決は困難でした。
そこで、オリエンタルモーターでは、外部センサによる高精度な位置検出とオープンループによる位置決めの特長を活用した機械端位置補正機能を開発しました。
本稿では、この機能を採用したCVDシリーズ フルクローズド制御タイプ(図1参照。以下、CVD-F)をもとに、ステッピングモーターの高精度位置決め技術について説明します。CVD-Fにより、ステッピングモーターの使いやすさや簡単さをそのままに、信頼性の高い高精度位置決めシステムを提供します。

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