ACモーターの回転速度を調整するには?


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照代さん。ちょっと確認させてください。ACモーターは印加電圧を下げると速度も下がりますよね?
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お問い合わせかしら?
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はい。変圧器(トランス)で速度の調整が出来るかお問い合わせいただきました。手間をかけたくないので、使用中のモーターを装置から外さずにできる、手軽な方法を探しているそうです。
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『下がりますよね?』ってことは、学くんは下がると思っているということ?
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そうです!小学生の頃にモーターの実験をした記憶があります。乾電池1つの時より2つ直列につないだ時のほうが早く回りました。これって印加電圧によってモーターの速度が変わったってことかと。
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すごいわね学くん。勉強熱心な子供だったのね。でもその実験はDCモーターだったと思うわ。ACモーターは同じようにはならないの。
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えっ?そうなんですか?
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下の特性図を見て。印加電圧を変化させた場合の回転速度-トルク特性に負荷トルクTLの線を加えたデータよ。ACモーターは負荷と釣り合ったポイントで回るから、TLと各カーブの交点が回転速度になるわ。するとどう?
回転速度-トルク特性 -
100Vから90Vに下げたことによってトルクが小さくなっていますね。ただ、回転速度はあまり下がっていないですね。80r/min程度でしょうか。
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そうなの。ACモーターは電圧を変えることによってトルクが変化するから結果として速度も変わるけど、それによって調整できる速度の幅は狭いの。かと言って電圧を下げすぎるとトルクが小さくなって回転しなくなるし。
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ずっとDCモーターと同じように考えていました。ACモーターは全然違うんですね。するとモーター単独での調整は出来ないってことなので、制御回路もあわせた紹介になりますね。
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制御回路と言っても、単相モーターにインバータが使えないことは知ってるわよね?
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大丈夫です。インバータは三相モーター用です。では変圧器での速度調整はおすすめしていないことを回答しつつ、オリエンタルモーターのスピードコントロールモーターをご紹介します。
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学くん。スピードコントロールモーターには2種類あるけど、それぞれの説明は大丈夫?
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えーと、少し不安なので確認してからご連絡します。
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学くん、この比較表を参考にして。以前作成した、それぞれの特徴を大まかにまとめたものよ。
比較表
比較項目 スピードコントロールモーター インバータ ACスピードコントロールモーター ブラシレスモーター 使い分けのヒント - コストを抑えてシンプルに使いたい(速度調整以外は不要)
- 負荷が変わっても比較的安定した速度で運転したい
- 低速から高速まで調節したい
- 負荷が変わっても安定した速度で運転したい
- 使用中のモーターを変えずに速度調整したい(三相インダクションモーターの場合のみ)
- インバータ1台で複数のモーターを回したい(V/F制御のみ)
電源入力 単相電源 三相電源/単相電源/DC電源 三相電源/単相電源
(インバータによる)モーター出力 6~90W 15~400W 30~200W 構成 単相インダクションモーターに
レートジェネレーターを搭載
+
スピードコントローラDCモーターにホールICを搭載
(一部エンコーダを搭載)
+
ドライバ三相インダクションモーター
+
インバータ制御対象 速度 速度
(一部トルク・位置も可能)速度 回転速度※
(速度比)50Hz 90~1400r/min(1:15)
60Hz 90~1600r/min(1:18)80~4000r/min(1:50) 90~3600r/min(1:40) 対負荷速度変動率※ ±1%(参考値) ±0.2% -5.5%(参考値) トルク特性 定価(WEBショップ価格)※ 28,050円(23,840円) 32,400円(27,540円) 27,190円(25,420円) - ※ 次の製品を例に記載しています。
ACスピードコントロールモーター:US2シリーズ
ブラシレスモーター:BMUシリーズ
インバータ:KⅡSシリーズ+一般的なインバータ
なお、価格については100Wクラスのモーター+回路としました。
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何ですかこれ。わかりやすいじゃないですか!僕にもください!
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新入社員教育の時に学くんにもあげたはずだけど。なくしたの?
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いえ…あります。多分…
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…。じゃあ気を取り直して。特性とか機能の違いはたくさんあるけど、使い分けの代表的なポイントを簡単に説明するわね。まずはACスピードコントロールモーター。これは手軽でリーズナブルなところが魅力よ。特にUS2シリーズは配線がシンプルなのでアッと言う間に動かせちゃうわ。この動画を見て。
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ほんとに簡単ですよね。僕は単相100V用にプラグ付の電源ケーブルが付属している点もおすすめです。コンセントに挿してすぐ動かしたいお客様には好評です。
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ただ特性面では注意が必要よ、学くん。回転速度-トルク特性からもわかるように、ACスピードコントロールモーターの低速域は連続運転領域が狭いの。短時間の運転であれば問題ないけど、連続的に使用する場合はモーターの発熱に注意する必要があるわ。ACスピードコントロールモーターは手軽に使える良さがあるけど、この点はご紹介する時にお伝えすべきポイントね。
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忘れずにお伝えします。
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じゃあ次、ブラシレスモーター。ブラシレスモーターは高速から低速まで調整出来て、更に速度変動率が小さい点ね。対負荷速度変動率は覚えてる?
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以前「ブラシレスモーターは負荷がかかっても速度は落ちないの?」で教えていただいたので覚えています。簡単に言うと、この値が小さいほど設定値に対して忠実に回転するということですよね。
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そうね。負荷が変化した場合でも回転速度を一定に保ちたい場合はおすすめね。
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例えばどんな使い方だと対負荷速度変動率が求められるんですか?
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色々あるけど、2列式コンベヤや研磨機、それに撹拌機なんかが当てはまるかしら。
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2列式コンベヤ -
研磨・バリ取り機 -
攪拌機
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2列式コンベヤは2台のモーターが同じ速度で回転しないといけないからで、研磨機は砥石とワークの摩擦によって負荷が増えても同じ速度で回転させたいからですよね。でも攪拌機はどうして対負荷速度変動率が求められるんですか?
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攪拌機は主に食品や薬品などをかき混ぜる目的で使われるけど、元々の粘度がさまざまなだけでなく、かき混ぜていくと変化するものもあるの。粘度が変化しても一定の速度でかき混ぜたい撹拌機の場合は、対負荷速度変動率が小さいほうが良いのよ。
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なるほど。確かにブラシレスモーターが最適ですね。
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それともうひとつ。さっきも話に上がったけど、インバータという手もあるわね。三相モーターなら後付けするだけだから、手軽に速度制御できるわ。それとインバータ1台で複数のモーターを制御(複数軸制御)できる点も、ACスピードコントロールモーターやブラシレスモーターにはない特徴ね。
複数軸制御の例(ベルトコンベヤ) -
複数のモーターを同様に動かす場合は簡単で良いですね。でも、どうしてそんなことが出来るんですか?
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他の2つと違ってモーターの状態を監視していない(オープンループ)からできるのよ。ただ複数軸制御はインバータの機能によるので選ぶ際に確認が必要ね。それと、インバータと三相モーターは組み合わせによって特性が異なることにも注意が必要よ。KⅡSシリーズならWEBサイトに組み合わせ特性データを公開しているからこちらもご案内してね。お客様の設計時の負担を減らせると思うわ。あっ学くん。そろそろお客様に回答しなくちゃ。
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はい。ではお客様に現在使用しているモーターや使い方を確認したうえで、「ACスピードコントロールモーター」「ブラシレスモーター」「インバータ+三相モーター」をご紹介します。
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それぞれの構造や動作原理の違いについてはWEBサイトのeラーニング「スピードコントロールモーターの使い分け」で詳しく説明しているから、あわせてご紹介してね。
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はい。事前に僕も見てみます。
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私の比較表も探して復習してね。
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…。はい。