寿命について ギヤヘッドの寿命

ギヤヘッドの寿命は主に軸受の機械的寿命により決まり、動力が伝達できなくなる状態をいいます。したがって、負荷の大きさ、負荷の加わり方、使用回転速度により、実際の寿命時間は変化してきます。当社ではある一定の条件下での寿命を定格寿命として定め、実際の使用状態での寿命は、それを基準に負荷の状態などを考慮して算出します。なお、当社ギヤヘッドの歯面潤滑はグリース潤滑です。注油する必要はありません。

平行軸・直交軸タイプの定格寿命

平行軸・直交軸タイプの定格寿命は、伝達トルクにより軸受にかかる荷重や、出力軸にかかるラジアル・アキシアル荷重により軸受にかかる荷重によって決まります。
当社では、以下の条件下でのギヤヘッドの寿命を定格寿命と定義しています。

条件

トルク
許容トルク
負荷の種類
一様負荷
入力回転速度
基準入力回転速度
ラジアル荷重
許容ラジアル荷重
アキシアル荷重
許容アキシアル荷重

表1:平行軸・直交軸タイプの定格寿命時間

モーター種類 シリーズ ギヤヘッドタイプ 基準入力回転速度
[r/min]
定格寿命
[時間]
ACモーター KIISシリーズ
KIIシリーズ
平行軸ギヤヘッド 1500 10000
直交軸中空ハイポイドGVギヤ
JHギヤ、JLギヤ 5000
BHシリーズ 平行軸ギヤヘッド 5000
直交軸ギヤヘッド 10000
ワールドKシリーズ
Kシリーズ
平行軸ギヤヘッド 5000
直交軸ギヤヘッド
TMシリーズ 平行軸ギヤヘッド 10000
トルクモーター
SMKシリーズ
平行軸ギヤヘッド 5000
FPWシリーズ 平行軸ギヤヘッド 5000
ACスピード
コントロールモーター
US2シリーズ
DSCシリーズ
平行軸ギヤヘッド 10000
JHギヤ、JLギヤ 5000
USシリーズ 平行軸ギヤヘッド 5000
直交軸ギヤヘッド
ブラシレスモーター BMUシリーズ
BLE2シリーズ
平行軸ギヤヘッド 3000 10000
平行軸ギヤヘッド
食品機械用H1グリース
5000
中空軸フラットギヤヘッド 10000
JHギヤ、JBギヤ、JVギヤ 5000
BXIIシリーズ
BLEシリーズ
BLVシリーズ
平行軸ギヤヘッド 10000
中空軸フラットギヤヘッド
BLHシリーズ 平行軸ギヤヘッド 10000
CSギヤードタイプ
中空軸フラットギヤヘッド
αSTEP/
ステッピングモーター
AZシリーズ
RKIIシリーズ
TSギヤードタイプ 1500 10000
FCギヤードタイプ 5000
ARシリーズ THギヤードタイプ 5000
FCギヤードタイプ
CRKシリーズ THギヤードタイプ 5000
2相PKシリーズ SHギヤードタイプ
(□90mm)
5000
2相PKPシリーズ SHギヤードタイプ 10000
CSギヤードタイプ
5相PKPシリーズ TSギヤードタイプ 10000
  • ※ 15Wは、定格寿命5000[時間]です。

遊星ギヤードタイプの定格寿命

遊星ギヤードタイプの定格寿命は、出力軸にかかるラジアル、アキシアル荷重により軸受にかかる荷重によって決まります。
当社では、以下の条件下でのギヤヘッドの寿命を定格寿命と定義しています。

条件

トルク
許容トルク
負荷の種類
一様負荷
入力回転速度
基準入力回転速度
ラジアル荷重
許容ラジアル荷重
アキシアル荷重
許容アキシアル荷重
  • ※ ラジアル荷重またはアキシアル荷重のどちらか一方が負荷された場合の値

表2:遊星ギヤードタイプの定格寿命時間

モーター種類 シリーズ ギヤヘッドタイプ 基準入力回転速度
[r/min]
定格寿命
[時間]
αSTEP/
ステッピングモーター
AZシリーズ
RKIIシリーズ
PSギヤードタイプ 1500 20000
ARシリーズ
CRKシリーズ
PSギヤードタイプ 20000
PNギヤードタイプ
サーボモーター AZXシリーズ
NXシリーズ
PSギヤードタイプ 3000 10000

ハーモニックギヤードタイプ、HPGギヤードタイプの定格寿命

ハーモニックギヤードタイプ、HPGギヤードタイプの定格寿命は、伝達トルクにより歯車や軸受にかかる荷重や、出力軸にかかるラジアル、アキシアル荷重により軸受にかかる荷重によって決まります。
当社では、以下の条件下でのギヤヘッドの寿命を定格寿命と定義しています。

条件

トルク
許容トルク
負荷の種類
一様負荷
入力回転速度
基準入力回転速度
ラジアル荷重
許容ラジアル荷重
アキシアル荷重
許容アキシアル荷重
  • ※ HPGギヤードタイプはラジアル荷重またはアキシアル荷重のどちらか一方が負荷された場合の値

表3:ハーモニックギヤードタイプ、HPGギヤードタイプの定格寿命時間

モーター種類 シリーズ ギヤヘッドタイプ 基準入力回転速度
[r/min]
定格寿命
[時間]
αSTEP/
ステッピングモーター
AZシリーズ HPGギヤードタイプ 1500 20000
ハーモニックギヤードタイプ
(□30mm、□42mm)
7000
ハーモニックギヤードタイプ
(□60mm、□90mm)
10000
ARシリーズ
CRKシリーズ
ハーモニックギヤードタイプ 5000
RKIIシリーズ ハーモニックギヤードタイプ
(□42mm)
7000
ハーモニックギヤードタイプ
(□60mm、□90mm)
10000
2相PKPシリーズ 薄型ハーモニックギヤ付
(□51mm)
5000
薄型ハーモニックギヤ付
(□61mm)
7000

寿命時間の推定

実際の使用においての寿命時間は使用回転速度、負荷量、負荷の種類を考慮した次式によって、算出します。また、この寿命時間は実際に駆動した時間を示します。

\(\begin{aligned}& L(\text { 寿命時間 })=L_1 \frac{K_1}{\left(K_2\right)^3 \cdot f}[\mathrm{h}] \end{aligned}\)
L1
定格寿命時間[時間]
各ギヤヘッドタイプにより表1~表3から決定します。
K1

回転速度係数
表1~表3に記載してある基準入力回転速度と、実際に使用する入力回転速度によりK1を算出します。

\(\begin{align}K_1=\frac{\text{基準入力回転速度}}{\text{使用入力回転速度}}\end{align}\)
K2

負荷率
実際に使用するトルクと各ギヤヘッドの許容トルクから負荷率K2を算出します。

\(\begin{align}K_2=\frac{\text{使用トルク}}{\text{許容トルク}}\end{align}\)

慣性体の駆動のようにほとんど起動・停止時のみ負荷がかかる場合は平均トルクを使用トルクとします。算出方法は平均トルクの求め方を参照してください。許容トルクはカタログに記載してある製品仕様値を示します。

f
負荷種類係数
次の駆動例を参考に負荷の種類から負荷種類係数fを決定します。
負荷の種類 負荷種類係数f
一様負荷
  • 一方向連続運転
  • ベルトコンベア、フィルム巻き取り等の負荷変動の少ない駆動
1.0
軽衝撃
  • 頻繁な起動・停止
  • カム駆動、ステッピングモーターによる慣性体の位置決め制御等
1.5
中衝撃
  • レバーシブルモーターの頻繁な瞬時正逆運転および起動・停止
  • ACモーターのブレーキパックによる頻繁な瞬時停止
  • ブラシレスモーター・サーボモーターによる頻繁な瞬時起動・停止
2.0

ご注意

ラジアル荷重、アキシアル荷重の影響について

  • この寿命時間の推定では負荷率に対し、ラジアル荷重、アキシアル荷重の値も比例した値で計算しています。したがって、負荷率が50%のときはラジアル荷重、アキシアル荷重も50%で計算した寿命となります。
  • 負荷率が低く、ラジアル荷重、またはアキシアル荷重が大きいときの寿命はこの式で計算した場合よりも短くなります。

平均トルクの求め方

ステッピングモーター、サーボモーターの使用においてはインデックステーブルやアームの駆動等、慣性体の間欠運転での使用があります。このような場合は以下のように平均トルクを使用トルクとして考えます。ACモーター、ブラシレスモーターによる慣性体の駆動は、負荷率を1.0とします。

慣性体のみの駆動①

慣性体のみの駆動で運転サイクルが長い場合は下図のようにトルクがかかります。定速時には軸受等の摩擦負荷がかかりますが、微少のため無視します。

慣性体のみの駆動①
$$\begin{align}P_a= \root 3 \of {\frac{({P_1}^3 \times n_1 \times t_1) + ({P_3}^3 \times n_3 \times t_3)}{(n_1 \times t_1) + (n_2 \times t_2) + (n_3 \times t_3)}}\end{align}$$

n1n3t1t3 領域での平均回転速度です。

上記例の場合は \(\begin{align}n_1= n_3 =\frac{1}{2}n_2\end{align}\) となります。

慣性体のみの駆動②:アーム等の駆動

アーム等の駆動において、以下のような変動負荷がかかる場合があります。例えば、2節アームや垂直方向にアームを駆動させた場合です。このような場合は、以下の式のように加減速最大の75%を平均トルクとします。

アーム等の駆動

運転温度について

ギヤヘッドの温度が上昇すると、軸受の潤滑に影響を及ぼします。
温度が寿命に及ぼす影響は、ギヤヘッドの軸受に加わる荷重の状況や取付角寸法など多くの要因により傾向が異なります。このため、温度の影響を寿命時間の推定計算式に考慮することは困難です。
次のデータは、ギヤヘッドの軸受に対して温度の及ぼす影響を表しています。ギヤケース表面温度が55℃以上において、寿命に影響する傾向にあります。

ギヤケース温度ファクター

注意点

条件によっては数万時間の寿命時間となる場合もありますが、あくまでも目安とお考えください。
寿命の推定は軸受の寿命の考え方をもとにしたものです。
仕様値を超えての駆動の場合は軸受以外の部品に影響を及ぼす場合がありますので、カタログに記載してある製品仕様値内でご使用ください。