寿命について ファンモーターの寿命
ファンモーターの寿命は、ある期間連続運転したためにファンモーターの送風能力が失われたり、もしくは騒音が大きくなったために使用できなくなった状態をいいます。
ファンモーターの寿命
- ①
- 回転寿命―回転速度がある値だけ低下したことにより定義されるもの
- ②
- 音響寿命―騒音がある値だけ増加したことにより定義されるもの
①の回転寿命については、数値的に明確に規定できる上に測定も容易であり、一般的に寿命といった場合にはこの回転寿命のことを表しています。
②の音響寿命では騒音が何dBか増えたときに寿命であると定義しますが、最終的判断は使用者の感覚によるもので、使用条件によっては規定値に達した後も使用可能な場合もあり、一般的に基準や寿命時間について示すものはありません。
当社では、ファンモーターの寿命を①の回転寿命によって定義し、定格回転速度の70%まで低下したことをもって寿命と判定しています。
ファンモーターの軸受寿命
ファンモーターの軸受はボールベアリングを採用していますが、ここではボールベアリングの寿命について解説します。ファンモーターは軸受に加わる荷重そのものが小さいため、軸受に注入されているグリースの劣化によってファンモーターの寿命が決定されます。
ファンモーターは動力用モーターと比べて、もともと運転・起動トルクが小さいので、グリースが劣化して潤滑材としての機能が失われると、軸受の起動トルクおよび動トルクが非常に大きくなり起動しない場合もあります。グリースが劣化するとファンモーターの軸受から発生する騒音が大きくなることから、グリース寿命によりファンモーターの寿命が左右されることになります。
グリースの寿命を数式で表したものが次式です。
- t
- 平均グリース寿命
- K1、K2、K3、K4
- グリースにより決定される定数
- Nmax
- グリース潤滑の許容回転数
- n
- 軸受の回転速度
- T
- 軸受の運転温度
この式でわかるのはNmaxが軸受により既に決まっているためグリース寿命は温度と軸受の回転速度に依存しているということです。しかし、軸受の回転速度については当社の製品のレベルでは寿命への影響がほとんどなく、 \(\displaystyle \frac{n}{N_{max}}\) は一定値となるため、温度によってグリース寿命が決定されることになります。
推定寿命について
軸受(ボールベアリング)のグリース寿命式により推定した寿命です。
推定寿命特性
ファンモーターの推定寿命特性を下図に示します。(例:小型AC入力ファンモーター MU1238Aタイプ)
このグラフはファンモーター軸受の定格電圧時の温度上昇値を実際に測定し、軸受のグリース寿命式により軸受の寿命を推定したものです。

期待寿命について
加速試験を実施し、使用周囲温度上限値のときに下記の判定基準を満足するファンが全体の90%以上であることを示します。
判定基準
- 回転速度(定格電圧時):定格の70%以上
- 入力電流(定格電圧時):定格の130%以内