スピードコントロールモーター / ブラシレスモーター ブラシレスモーターの停止精度
高精度な位置決め運転をおこなう場合、一般的に停止精度の優れたステッピングモーターやサーボモーターが多く使用されます。
しかし、使用条件や使い方によっては、ブラシレスモーターでも数mm程度のオーバーランで停止することができます。
ここでは、ブラシレスモーターのオーバーラン特性(代表値)を用いた停止精度の算出方法、更に停止精度の向上に効果的な使い方をご紹介します。
停止精度とは
停止精度とは「目標位置に対する停止位置の誤差」のことを指し、「停止精度 = オーバーラン + ばらつき」と考えることができます。
また停止精度に影響する要因は主に3つあり、下表の赤枠の状態の場合、「オーバーラン + ばらつき」は小さくなります。
今回はモーターで調整可能な回転速度に注目し、ブラシレスモーターの停止精度を算出します。
要因 | 停止精度 (オーバーラン + ばらつき) |
|
---|---|---|
回転速度 | 速 | 大 |
遅 | 小 | |
慣性負荷 | 大 | 大 |
小 | 小 | |
摩擦負荷 | 大 | 小 |
小 | 大 |
計算条件

- アプリケーション
- ベルトコンベヤ
- ベルトのスピード
- VL = 0.05~1 [m/s]
- モーターの電源
- 単相100V
- ローラーの直径
- D = 0.1 [m]
- ローラーの質量
- m2 = 1 [kg]
- ベルトとワークの総質量
- m1 = 7 [kg]
- 外力
- FA = 0 [N]
- しゅう動面の摩擦係数
- μ = 0.3
- ベルトとローラーの効率
- η = 0.9
事前の選定計算で、120Wのモーター+減速比15のギヤヘッドでワークの搬送が可能であることが確認できているため、今回はBLE2シリーズの「品名 : BLM5120HPK+5H15S+BLE2D120-A」で検討を進めます。
1. 停止精度の算出 : NM = 3000r/min
オーバーラン特性(代表値)を使用します。
今回使用するBLE2シリーズ 120Wのオーバーラン特性(代表値)はこちらからご覧ください。
- ※ ブラシレスモーター BMUシリーズ、BLE2シリーズ、BXⅡシリーズ、BLHシリーズのオーバーラン特性(代表値)は各製品の詳細ページに掲載しています。その他シリーズは、お客様ご相談センターにお問い合わせください。
1)モーター軸換算
グラフはモーター単体の値なので、選定計算で求めたギヤ軸の回転速度と慣性負荷をモーター軸に換算します。
- ①
- モーター軸回転速度
NM = NG × i = 191×15 = 2865 [r/min]
近似する3000r/minの黒色破線のカーブを使用します。
- ②
- モーター軸慣性負荷
JM = JG ÷ i 2 = 200×10-4÷152 ≒ 0.9×10-4 [kg・m2]
- ③
- モーター軸オーバーラン
①(黒色破線のカーブ)と②(横軸)より、オーバーラン(縦軸)の値を読み取ると、約0.9±0.2 [Rev]であることが分かります。
2)ギヤ軸換算
1)で求めたオーバーランをギヤ軸に換算します。
ORG = ORM ÷ i = (0.9±0.2)÷15 ≒ 0.06±0.013 [Rev]
3)ベルトコンベヤ軸換算
2)で求めたオーバーランをベルトコンベヤ軸に換算します。
ORC = D × π × ORG = 100×3.14×(0.06±0.013) ≒ 19±4 [mm]
以上のことより、ベルトコンベヤの停止精度はオーバーランが19mmで、そのばらつきが±4mm程度と推測することができます。
2-1. 停止精度の向上 : 減速停止(NM = 3000r/min→1000r/min→停止)
オーバーラン特性からもわかるように、回転速度が遅くなるに従って、オーバーランは小さくなります。
ここでは減速してから停止した場合のオーバーランを算出します。

「1. 停止精度の算出」と同様の手順で求めます。
1000r/min(青色破線のカーブ)と0.9×10-4 [kg・m2](横軸)よりオーバーラン(縦軸)の値を読み取ると、約0.2±0.1 [Rev]であることが分かります。
この値をギヤ軸に換算します。
ORG = ORM ÷ i = (0.2±0.1)÷15 ≒ 0.013±0.007 [Rev]
最後にベルトコンベヤ軸に換算します。
ORC = D × π × ORG = 100×3.14×(0.013±0.007) ≒ 4±2 [mm]
以上のことより、減速停止した場合の停止精度は、オーバーランが4mmでそのばらつきが±2mm程度と推測することができます。
(この場合、停止位置のセンサとは別に、減速ポイントにもセンサが必要になります。)
2-2. 停止精度の向上 : ギヤの減速比を大きくする(i = 15→30)
前述のとおり、ギヤ軸のオーバーランはモーター軸の値をギヤの減速比で割った値となります。
従って、減速比を大きくすることにより、オーバーランを抑えることができます。
ここでは、減速比を大きくした場合のオーバーランを算出します。
(この場合、ベルトのスピードもMax0.5 [m/s]と半減します。)
1)モーター軸換算
- ①
- モーター軸回転速度
「1. 停止精度の算出 : NM = 3000r/min」と条件をあわせるため、3000r/minの黒色破線のカーブを使用します。
- ②
- モーター軸慣性負荷
JM = JG ÷ i 2 = 200×10-4÷302 ≒ 0.2×10-4 [kg・m2]
- ③
- モーター軸オーバーラン
①(黒色破線のカーブ)と②(横軸)より、オーバーラン(縦軸)の値を読み取ると、約0.6±0.2 [Rev]であることが分かります。
2)ギヤ軸換算
1)で求めたオーバーランをギヤ軸に換算します。
ORG = ORM ÷ i = (0.6±0.2)÷30 ≒ 0.02±0.007 [Rev]
3)ベルトコンベヤ軸換算
2)で求めたオーバーランをベルトコンベヤ軸に換算します。
ORC = D × π × ORG = 100×3.14×(0.02±0.007) ≒ 6±2 [mm]
以上のことより、ギヤの減速比を1/15から1/30に大きくした場合の停止精度は、オーバーランが6mmでそのばらつきが±2mm程度と推測することができます。
4. まとめ
ブラシレスモーターの停止精度、停止精度の向上に効果的な使い方の説明をおこないました。
モーター軸回転速度 [r/min] | ギヤ減速比 | ベルトスピード [m/s] | 停止精度 | |
---|---|---|---|---|
オーバーラン [mm] | ばらつき [mm] | |||
3000 | 15 | 1 | 19 | ±4 |
3000 → 1000 | 15 | 1 → 0.35 | 4 | ±2 |
3000 | 30 | 0.5 | 6 | ±2 |
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