αSTEP/ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性
ステッピングモーターを使用するときには、モーターの特性が使用条件に適しているかどうかが重要なポイントになります。
ここではステッピングモーターを使用する上で重要となる特性を説明します。
ステッピングモーターの特性は大きく分けて2つに分類されます。
- 動特性:
ステッピングモーターの起動または回転に関する特性で、主に機器の動作やサイクルタイムに関係があります。 - 静特性:
ステッピングモーターが停止しているときの角度変化に関する特性で、機器の精度に関係があります。

動特性
回転速度―トルク特性
ステッピングモーターを駆動したときの回転速度とトルクの関係を表した特性図です。
ステッピングモーターの選定時に必ず使用する特性です。横軸はモーター出力軸の回転速度を、縦軸はトルクを表しています。
回転速度―トルク特性はモーターとドライバによって決まり、使用ドライバの種類によって大きく異なります。
- ①
- 励磁最大静止トルク(TH:Holding Torque)
ステッピングモーターが通電状態(定格電流)で停止しているときに持っている最大の保持トルク(保持力)のことです。
- ②
- プルアウトトルク(Pullout Torque)
各回転速度で出すことのできる瞬時最大トルクです。
モーターを選定する場合は必要トルクがこの曲線の内側に入っていなければなりません。
- ③
- 最大自起動周波数(fS)
ステッピングモーターが摩擦負荷、慣性負荷が0のとき、瞬時(加減速時間なし)に起動、停止できる最大のパルス速度です。
これ以上のパルス速度でモーターを駆動する場合には、徐々に加減速する必要があります。慣性負荷がモーターに付くことによってこの周波数は低下します。
(慣性負荷―自起動周波数特性 参照)
最大応答周波数(fr)
ステッピングモーターが摩擦負荷、慣性負荷が0のとき、徐々に加減速することにより運転することのできる最大のパルス速度のことです。
下図は代表的な5相ステッピングモーターの回転速度―トルク特性です。

慣性負荷―自起動周波数特性
自起動周波数の慣性負荷による変化を表した特性です。
ステッピングモーターのローター自身や負荷には、慣性モーメントがあるため、瞬時起動時、停止時に遅れや進みがモーター軸に生じます。この値はパルス速度によって変わってきますが、ある値を超えるとモーターはパルス速度に追従できなくなり、脱調(ミスステップ)してしまいます。
この脱調する寸前のパルス速度を自起動周波数といいます。

慣性負荷に対する最大自起動周波数の変化は、次式で近似することができます。
- fS
- モーター単体の最大自起動周波数[Hz]
- f
- 慣性負荷がある場合の最大自起動周波数[Hz]
- JO
- ローターの慣性モーメント[kg·m2]
- JL
- 負荷の慣性モーメント[kg·m2]
振動特性
ステッピングモーターは連続的なステップ状の動きをしながら回転しています。そのステップ状の動きのひとつを見たものが下の1ステップ応答です。
- ①
- 停止状態のステッピングモーターに1パルスを入力すると、次のステップ角度に向かって加速します。
- ②
- 加速したモーターはステップ角度を通過し、ある角度をオーバーシュートした後、逆方向に引き戻されます。
- ③
- このように減衰振動した後、所定のステップ角度の位置で停止します。

このような減衰振動を生じるステップ状の動きが低速時の振動の原因です。
ステッピングモーターの回転中の振動の大きさを表す特性が振動特性です。
振動レベルが小さいほど滑らかに回転していることになります。

静特性
角度―トルク特性
モーターを定格電流で励磁し、モーターシャフトに外部よりトルクを加えローターに角度変化を与えたときの角度とトルクの関係を角度―トルク特性といい、下図のような特性になります。

上の特性図の各ポイントでのステーターとローターの小歯の位置関係を下図に示します。
安定点①で釣り合って停止しているとき、モーターシャフトに外力を加えると、安定点①に引き戻そうと左方向にトルクT(+)を発生し、外力と釣り合った角度で停止します。②
さらに外力をかけていくと発生トルクが最大になる角度があります。そのときの発生トルクが励磁最大静止トルクTHです。③それを超える外力をかけると、不安定点⑤を通り、外力と同方向にトルクT(−)を発生し、次の安定点①まで移動し停止します。

安定点:
ステーターとローターの小歯が完全に相対した位置で停止している場所のことです。非常に安定しており、外力を0にすると必ずこの場所で停止します。
不安定点:
ステーターとローターの小歯が1/2ピッチずれた場所のことです。非常に不安定な状態で、外力が少しでも加わると右か左の安定点に移動してしまいます。
角度精度
ステッピングモーターは無負荷状態で±3分(0.05°)以内の角度精度を持っています。そのわずかな誤差の原因はステーターとローターの機械的精度や、ステーター巻線の微小な抵抗のばらつきによるものです。
ステッピングモーターの角度精度を表すものとしては次の静止角度誤差が一般的です。
静止角度誤差:
ローターの理論上の停止位置と実際の停止位置とのズレのことです。ローターの任意の停止位置を出発点とし、1 ステップずつ360°測定したときの(+)の最大値と(−)の最大値との幅を表します。

静止角度誤差は±3分以内ですが、これは無負荷条件での値です。
しかし実際の用途においては必ず摩擦負荷が存在します。
その際の角度精度は角度―トルク特性より、摩擦負荷に応じた角度変位を生じます。摩擦負荷が一定の場合、一方向運転のときには変位角度は一定ですが、正逆両方向から運転をおこなうときには往復で2倍の変位角度を生じます。
停止精度が必要な場合には必ず一方向からの位置決めをおこなってください。
