1. ブラシレスモーターの基礎

ブラシレスモーターは、その名前の通り「ブラシのない」モーターです。
この章では、ブラシレスモーターの原型であるDCモーターとブラシレスモーターの構造と動作原理から特性までを説明します。

1-1. DCモーターの構造

DCモーターとは、直流モーター(Direct-current motor)の略称で、名前のとおり直流電圧を印加することで回転するモーターです。
ステーター(固定子)に永久磁石が取り付けられ、その中央に巻線を施したローター(回転子)が配置されています。
ローターには複数の巻線があり、巻線の両端は整流子に接続され、これがブラシ(電極)に接触する構造となっています。

DCモーターの構造

1-2. DCモーターの回転原理

DCモーターの回転原理は、フレミングの左手の法則で説明することができます。
下図はDCモーターの簡易モデルです。
N極、S極が向かい合うように1対の永久磁石が配置されています。
その永久磁石の間にひと巻きのコイルがあり、一点鎖線を軸にして自由に回転できる構造となっています。
コイルの両端には整流子を取り付け、そこにブラシが接触しています。
ブラシには直流電源を配線しており、そのプラス側(正極)から電流が供給され、コイルを通ってマイナス側(負極)へ帰還します。

DCモーターの構造

磁界の中に配置された巻線にブラシと整流子を通して電流が流れます。フレミングの左手の法則にしたがってN極側の導体は上方向に、S極側の導体は下方向に電磁力が働き、巻線は時計方向に回転します。

DCモーターの構造

巻線が回転して90°近くになると整流子とブラシが接触しなくなり、電流が流れない状態になりますが、巻線は惰性で回転します。

DCモーターの構造

巻線の惰性により、再び整流子とブラシが接触し電流が流れ、時計方向の電磁力が発生します。

DCモーターの構造

DCモーターは、ブラシと接触する整流子が切替ることで巻線に流れる電流の向きが切替り、巻線に一定方向の力が働くことで回転を続けます。

1-3. DCモーターの回転速度-トルク特性

下図はモーターに一定の電圧を印加した場合の、DCモーターの回転速度-トルク特性です。
縦軸は負荷トルク(モーターにかかる負荷の大きさ)、横軸はモーターの回転速度を表しています。
V1、V2、V3はモーターへの印加電圧を表しています。
発生トルクが電流に比例する特性のため、印加電圧を上げていくと、モーター電流が増加してトルクが大きくなります。
負荷トルクTLが一定の場合に印加電圧をV1からV2、V3と変化させると、回転速度がN1からN2、N3へと変化します。
印加電圧がV1で負荷トルクがT1の場合、回転速度Nsで回転しますが、負荷がT2に増えるとモーターは停止します。その場合、印加電圧をV2にすることで回転速度がNsで回転することができます。
このようにDCモーターは、負荷の変化にともない電圧を調整することで速度制御ができます。

DCモーターの回転速度-トルク特性

1-4. DCモーターのまとめ

メリット

  • リード線が 2 本で、直流電圧を印加するだけで回転する
  • 電源の極性を反転させると回転方向が反転する
  • 永久磁石を使っているので、小型、軽量で、効率が良い
  • 起動トルクが大きく制御性が良い
  • 電圧(電流)に対して、速度とトルクが比例する
  • 乾電池やバッテリで駆動できる
  • 低価格

デメリット

  • ブラシの摩耗により寿命が短い
  • 機械的な摺動音が発生する
  • 電気的なノイズを発生する

DCモーターは、DC電源を接続するだけで簡単に使えるため多種多様な用途で使用されているモーターです。
しかし、ブラシと整流子の摺動によりブラシが摩擦するため、摩耗紛やブラシの交換など定期的なメンテナンスが必要になります。
モーターの使用台数が多くなるとメンテナンスの手間がかかるため、メンテナンスフリーで長寿命のモーターが求められます。
DCモーターが持つ制御性の良さはそのまま維持し、デメリットの原因であるブラシと整流子を電子部品に置き換えたモーターがブラシレスモーターです。

内容についてご不明点はありませんか?お気軽にお問合せください。