「モーターによってオーバーランは違うんですか?」
- 学くん
- 照代さ~ん。基本的なことなんですが、モーターの「オーバーラン」について分からないことがあって・・・。
- 照代さん
- 何かしら?
- 学くん
- えっと~、モーターを停止させるときに、電源を切ってからモーターが完全に停止するまでの回転量のことを「オーバーラン」っていうんですよね?
- 照代さん
- そうよ。オーバーランはモーター軸にかかる負荷慣性モーメントが大きくなるほど大きくなってしまうの。
- 学くん
- え?負荷慣性モーメントが関係するのですか?
- 照代さん
- そうよ。例えば、荷物を載せているトラックと、載せていないトラック。同じ速度で急停止させた場合に、荷物を載せたトラックの方が停止するまでの距離が長くなるでしょ。これと同じで、モーターも負荷慣性モーメントの大きな方がオーバーランは大きくなってしまうの。
-
- 学くん
- なるほど!通常、モーターのオーバーランはどのくらいの量になるんですか?
- 照代さん
- モーターの種類によっても違いがあるのよ。 インダクションモーターのオーバーランは、負荷慣性モーメントがない場合で約30~40回転ね。
- 学くん
- モーターによってオーバーランは違うんですか?!
- 照代さん
- そうよ。レバーシブルモーターの場合では、約5~6回転になるわね。
- 学くん
- えっ、どうして、レバーシブルモーターはインダクションモーターよりオーバーランが小さいのですか?
- 照代さん
- レバーシブルモーターは、回転方向を瞬時に切り替えられるように簡易ブレーキを内蔵しているでしょ。だから、インダクションモーターに比べてオーバーランは小さくなるのよ。
- 学くん
- なるほど。ところで、「簡易ブレーキ」って、どんなブレーキですか?
- 照代さん
-
ローターにブレーキ板が取り付けられていて、これにブレーキシューを押し付けているの。
- 学くん
- へぇー。このオーバーランはモーター軸の回転数ですか!
ギヤヘッドを使用した場合ではオーバーランはどうなるんですか? - 照代さん
- いいところに気づいたわね!そうよ、モーター軸の回転数を表しているわ。だから、ギヤヘッドを一緒に使った場合の出力軸のオーバーランは、ギヤヘッドの「減速比分の1」になるのよ。
- 学くん
- ということは、例えばインダクションモーターに減速比1:3のギヤヘッドを使用した場合、ギヤヘッド出力軸のオーバーランは約10~13回転になるってことですよね。
- 照代さん
- そういうこと。ギヤヘッドの減速比が大きくなるほどオーバーランは小さくなるの。ただし、回転速度も減速比分の1になるので、運転速度が遅くなってしまう。つまり、生産量が下がってしまうの。お客様には充分に検討していただく必要があるわね。
回転速度を変えずにオーバーランだけを小さくするのであれば、電磁ブレーキ付モーターを使用したり、ブレーキパックを併用する方法があるわね。 - 学くん
- あっ!この前、教えてもらいました。
機械的に保持する電磁ブレーキ付モーターと、制動電流を流して瞬時停止させるブレーキパックですよね。 - 照代さん
- そうね。電磁ブレーキ付モーターのオーバーランは約2~3回転、ブレーキパックでは約1~1.5回転になるわね。
- 学くん
- そうでした。オーバーランをポイントに見ても、モーターによってこんなに違うんですね。
-
モーター種類別オーバーラン一覧(参考値)
インダクション
モーターレバーシブル
モーター電磁ブレーキ付
モーターブレーキ
パック併用無負荷時
モーター単体約30~40
回転約5~6
回転約2~3
回転約1~1.5
回転減速比1:3の
ギヤヘッド取付時約10~13
回転約1.7~2
回転約0.7~1
回転約0.3~0.5
回転 - 照代さん
- モーターは用途によって使い分けることが必要ね。だから、お客様からお問い合わせをいただいたときは、使用条件をきちんと確認して適切なモーターをご紹介できるように頑張ってね!
- 学くん
- はい!頑張ります。ありがとうございました。